すみません。その魔王は親友なので、勝手に起こさないでもらえます?

行枝ローザ

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賢者、魔獣の急襲に遭う。

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実に素晴らしい──魔力を魔術として変換し利用できる魔術師または魔法使いというものと、私の適職となった賢者とはやはりその系統が違うのか、魔法陣に呪文を複数繋げて入れるのではなく、完結したものを次々と展開するために魔力を流すらしい。
しかしそれでは魔力の無駄使いではないのか。
重ね掛けと連続したものを一貫して使うものと、一体どちらが魔力の消費量が少ないのか。
どういう順番であれば効果が一番高いのか。
どう組み合わせたら互いを打ち消すのか。
私たちは様々にお互いの知識を語り合った。
いや、本当に得難い──
「……あたしもけっこうな魔法バカだと思ってたけど、上回る魔法バカがいた……」
「うん。ラダの場合は攻撃特化だとか防御特化だとか、後は薬の効能上昇だとか、よく分かんないこと言ってるとは思ってたけど……」
「魔法の基礎学ぐらいは教えられた私ですら、パト賢者様とリストの話はわからない……」
ラダが呆れた表情をする横で、ケヴィンとミウがさらに不可解さを隠しもせずに私たち2人を評価する。
しかしそうか──ラダはパーティーメンバーの能力上げの方に興味があるのか。
「何と!薬効上昇の魔術?そちらを研究している者はなかなか魔術研究所にはいないのだよ!ぜひ詳しく……」
あ、仲間がいた。
「ちょ、ちょっと!リスト!」
「うむ?何かな?ミウラリア……ああ!心配ない!私の目には君以外の女性は女と認識できないのだから!」
「ちょっと!それはそれで失礼なんだけど?!」
ミウが慌ててカウラセンがラダに近付くのを止めようとしたが、それはそれで見当違いな方面に受け取った彼女の婚約者殿が自身の潔白を保証する。
しかしそれは対象とされた相手に失礼だろう──と思ったら、ちゃんと自分で抗議できる女性であったのだ、ラダという者は。
「つうか!私だってアンタを男と見るほど趣味悪くないわ!ましてや親友の恋人なんでしょ?!」
「しっ……親友っ……」
「こっ……恋…人……」
何というのか、初々しい婚約カップルはそれぞれが聞きとったラダの言葉に反応して赤くなってしまい、これ以上は私との魔法学理論の知識交換はお開きとなった。


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