すみません。その魔王は親友なので、勝手に起こさないでもらえます?

行枝ローザ

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賢者、魔王と再会する。

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家々を見回った際には新鮮な野菜や備蓄食材などいろいろあったが、ケヴィンたちはそれらに手を付けようとはしなかった。
もちろん村長宅らしき家も同様だったが、眠らせてもらった部屋と手洗い場を使わせてもらった以外は、中に人がいるかどうかを確認した後は手も付けていない。
「ここは共同の炊事場みたいだからいいんだよね?」
「ええ。私のいた集落にもやはりこういう炊事場を作ってもらって、村の方から親御さんたちがやってきた時に、子供たちが中心となってご馳走しましたから」
「いいなぁ……学び舎…と寄宿舎だっけ?子供だけで生活するって、すごいね」
「ケヴィンたちはどうやって勉強を?」
「え?僕はしてない。 16歳になったら計算と書き方を教えてもらえるけど、それまでは大人たちの手伝いしかさせてもらえないし。僕はその前に村を出ちゃったし」
「俺の村には近隣の村と共同で勉強を教えてくれる『教師』という人と、後は教会の人が年齢ごとに教えてくれていたな。ケヴィンには俺が村で習ったことを多少は教えた」
「じゃ、読み書きぐらいは」
「できる……よな?」
「できるよ!できないと冒険者にはなれないってデューンがうるさく言って、そしたらデューンだけじゃなく他の人たちもどんどん教えてきて……」
むぅっと頬を膨らませてケヴィンはそっぽを向いたが、デューンは苦笑するだけで否定しない。
「そりゃぁ……あの頃のお前ぐらいなら『教えてもらう必要はない』って反抗するのが普通なのに、そりゃあ素直に学んでいったからな。本当は王家付きの家庭教師になるのが夢だった司祭プリーストなんて、そりゃもう喜んで……」
「え?!そうなの?反抗してよかったの?!」
今さらだがショックを受けたという顔でケヴィンは目を丸くし、ラダは呆れたように笑った。
「まったくねぇ……おかげで王様の前に出ても恥ずかしくないぐらいの知識は身に付けれてんだから、よかったじゃない。あ、アタシはもちろん魔法使いの師匠から教えてもらってたわよ?ケヴィンよりずっと前からね」
「わ、私は……あの……か、家庭教師がいて……」
何故か肩身が狭い思いをしているのか、ミウは消えそうな声で告白した。


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