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賢者、仲間の由来を知る。
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野営を続け、時々は町や村に立ち寄り、魔王や魔物の情報がないかと聞き込む。
そうそう簡単に見つかるものではないと思っているが、それでも突然魔獣の群れが現れたとか、魔物が人を襲いだしたとか、『常にない現象』に怯えている集落に当たることが多かった。
「……本当に君たちはある意味『幸運』なんだな」
「そうだろう?俺だけではそうでもないが、やはりケヴィンと……特出してミウの『当たり』はすごい」
「あら!アタシだってそんなに運が良いわけ……ではないと、思う……けど?」
ラダが首を傾げるが、『運良く』自分の住んでいる村に薬師として活動する魔法使いがいて、『運良く』その弟子になり、『運良く』ちゃんとその才能があり、『運良く』勇者剣士となったケヴィンが忘れずに迎えに来た──充分『運が良い』と思えるのだが。
「『幸運判定』で言えば、きっと私が一番低いと思うんだけど……」
「それこそ『何寝言言ってんの?』って言いたいわよ?パトリック賢者様」
謙遜しているわけではなく、どう考えても私はそんなに運が良いとは思えないのだが、すかさずラダに否定される。
だが本当に運が良ければ、何度も短命で人生を終え、やり遂げたことがないと見せつけられるように記憶を持って何度も転生するはずがないのだ。
それに本当に運が良ければ、こうやって勇者パーティーに参加できたという時点で、すぐに魔王に会えてもおかしくないのではないかと思うだが──
「でもそんな僕たちでも、何故か魔王そのものに会ったことはないんだよねぇ……」
「そうね。伝え聞いた『漆黒のマント、漆黒の鎧、漆黒の刀を身に付けた、黒く大きい人間のような形をした魔物』としか聞いたことないものね……魔法研究所には魔素研究のために伝承も集めているし、それを基にした絵姿もあるらしいんだけど……兄さんや妹はともかく、私は入れてもらえなかったから」
ケヴィンとミウが顔を見合わせる。
そんなミウは両親が責任者となっている施設に入れてもらうこともできず、ずいぶんと教育にも差をつけられていたようだ。
さすがに不憫になるが、どうやって魔力を弓矢に込めて強弓とできたのか、それはやはり天賦の才能なのだろう。
そうそう簡単に見つかるものではないと思っているが、それでも突然魔獣の群れが現れたとか、魔物が人を襲いだしたとか、『常にない現象』に怯えている集落に当たることが多かった。
「……本当に君たちはある意味『幸運』なんだな」
「そうだろう?俺だけではそうでもないが、やはりケヴィンと……特出してミウの『当たり』はすごい」
「あら!アタシだってそんなに運が良いわけ……ではないと、思う……けど?」
ラダが首を傾げるが、『運良く』自分の住んでいる村に薬師として活動する魔法使いがいて、『運良く』その弟子になり、『運良く』ちゃんとその才能があり、『運良く』勇者剣士となったケヴィンが忘れずに迎えに来た──充分『運が良い』と思えるのだが。
「『幸運判定』で言えば、きっと私が一番低いと思うんだけど……」
「それこそ『何寝言言ってんの?』って言いたいわよ?パトリック賢者様」
謙遜しているわけではなく、どう考えても私はそんなに運が良いとは思えないのだが、すかさずラダに否定される。
だが本当に運が良ければ、何度も短命で人生を終え、やり遂げたことがないと見せつけられるように記憶を持って何度も転生するはずがないのだ。
それに本当に運が良ければ、こうやって勇者パーティーに参加できたという時点で、すぐに魔王に会えてもおかしくないのではないかと思うだが──
「でもそんな僕たちでも、何故か魔王そのものに会ったことはないんだよねぇ……」
「そうね。伝え聞いた『漆黒のマント、漆黒の鎧、漆黒の刀を身に付けた、黒く大きい人間のような形をした魔物』としか聞いたことないものね……魔法研究所には魔素研究のために伝承も集めているし、それを基にした絵姿もあるらしいんだけど……兄さんや妹はともかく、私は入れてもらえなかったから」
ケヴィンとミウが顔を見合わせる。
そんなミウは両親が責任者となっている施設に入れてもらうこともできず、ずいぶんと教育にも差をつけられていたようだ。
さすがに不憫になるが、どうやって魔力を弓矢に込めて強弓とできたのか、それはやはり天賦の才能なのだろう。
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