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賢者、仲間の由来を知る。
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しかも今ではミウの両親に報告していないとはいえ、そして押し切られた感が強いが、カーリン・リストニス・カラウセン侯爵と婚約の印を交わしたことで、彼女の両親は知らずに娘を他の貴族に『売りつける』ことはできなくなった。
いや、普通の貴族であれば子供だけで交わした婚約などただの児戯と侮り、『正式な婚約者』を連れてきて婚姻に及ぶだろう。
「そういう意味では魔法使いが施す『婚姻の儀』で、ミウの身は安全というわけだ」
「そうねぇ……しかも魔法研究所トップクラスの1人でしょう?しかもミウ自身の魔力量がどれくらいあるのか、『魔法を使えない』っていう時点で『出来損ない』って決めつけた親だったら重視してないでしょうしねぇ」
ミウが顔を赤くして体をくねらせるが、ラダは肘で突いて揶揄うのを止めない。
だがそれくらい高魔力で繋がれた『印』の力は強いのだ。
ひょっとしたカラウセンとミウの2人がかりよりもトリウス伯爵夫妻の方が魔力量は多いかもしれないが、何となく2人で結んだ『婚約の印』が破られることはないような気がする。
「そこよね!」
「そこだな……」
「そこだよねぇ」
三者三様に頷くその様子で、やはり私の推測は間違っていないことを確信する。
「何回もミウがあのカーリンを突っぱねてたって言ったでしょ?」
「ええ」
「その何回目かで『自分より弱い男は嫌だ』ってミウが言って」
「身体能力では、私の方が絶対上だったんだもん。そう言えばさすがに諦めると思って……」
「そしたら、『魔力量で勝負だー!』って言ってさ」
「ミウは幼い頃、すでに魔法が使えないと両親に見放されていたからな……彼らは10歳を過ぎてからどれくらい魔法量があるかという測定すらしていなかったんだ」
「それはそれは……何ともったいないことを」
どうもミウの家庭環境の悪さにパーティーの皆はかなり憤りを感じているようで、この年齢もパーティー加入も最年少の『末っ子』をかなり気遣い、自分たちののぞむ能力を持っていなかったというだけで見捨てた伯爵夫妻を愚か者だと断じた。
「王都にある冒険者ギルドも魔法研究所も、ミウの魔力量を測定するのは拒否したのよね」
「それでベッカ公爵が伝手を使って、隣国から鑑定士を呼ぶ騒ぎになって……」
「そこまでしなくていいって言ったのに……ベッカのおじさま、『絶対に認めさせてやる!』って怒っちゃって……カーリンがこれ幸いと便乗して、自分の魔力量と比べろって言い出しちゃうし……」
「あれはミウが悪いよ!」
「え?わ、私?!」
「身体能力では勝てなくても、自分の得意分野では負けられないって思うもんなんだよ!普通!」
「い、いやぁ……でも、まさかあっちも自分の魔力量を晒してくるなんて思わなかったんだもん……」
「そりゃ、本来は魔法使いにとっての極秘情報のひとつだもんね」
ケヴィンが男として理解できると頭を振ったが、ラダはそこまでして『ミウより強い男』だということを示そうとしていたことに呆れたような声を上げる。
「結果は?」
「……火属性とか水属性とかは判明しなかったけど、めちゃめちゃ魔力量はすごくって!カーリンより少し多くて……さすがにその時は落ち込んでたけどねぇ」
「だが、そのすぐ後に『魔力量を増やす研究をして自分で試すから、成功したらまた勝負だ!』と元気になって去って行ったじゃないか」
つまりあの男は、一度は本当に撤退したのか──必ずミウより『強く』なると宣言して。
「今回はそういう『ミウより強いかどうか』という勝負みたいなことはしませんでしたねぇ」
「そっ…それはっ……」
思わず私は微笑んでしまったが、まあ『勝負』というかミウが『押し負けた』のだけは理解している。
いや、普通の貴族であれば子供だけで交わした婚約などただの児戯と侮り、『正式な婚約者』を連れてきて婚姻に及ぶだろう。
「そういう意味では魔法使いが施す『婚姻の儀』で、ミウの身は安全というわけだ」
「そうねぇ……しかも魔法研究所トップクラスの1人でしょう?しかもミウ自身の魔力量がどれくらいあるのか、『魔法を使えない』っていう時点で『出来損ない』って決めつけた親だったら重視してないでしょうしねぇ」
ミウが顔を赤くして体をくねらせるが、ラダは肘で突いて揶揄うのを止めない。
だがそれくらい高魔力で繋がれた『印』の力は強いのだ。
ひょっとしたカラウセンとミウの2人がかりよりもトリウス伯爵夫妻の方が魔力量は多いかもしれないが、何となく2人で結んだ『婚約の印』が破られることはないような気がする。
「そこよね!」
「そこだな……」
「そこだよねぇ」
三者三様に頷くその様子で、やはり私の推測は間違っていないことを確信する。
「何回もミウがあのカーリンを突っぱねてたって言ったでしょ?」
「ええ」
「その何回目かで『自分より弱い男は嫌だ』ってミウが言って」
「身体能力では、私の方が絶対上だったんだもん。そう言えばさすがに諦めると思って……」
「そしたら、『魔力量で勝負だー!』って言ってさ」
「ミウは幼い頃、すでに魔法が使えないと両親に見放されていたからな……彼らは10歳を過ぎてからどれくらい魔法量があるかという測定すらしていなかったんだ」
「それはそれは……何ともったいないことを」
どうもミウの家庭環境の悪さにパーティーの皆はかなり憤りを感じているようで、この年齢もパーティー加入も最年少の『末っ子』をかなり気遣い、自分たちののぞむ能力を持っていなかったというだけで見捨てた伯爵夫妻を愚か者だと断じた。
「王都にある冒険者ギルドも魔法研究所も、ミウの魔力量を測定するのは拒否したのよね」
「それでベッカ公爵が伝手を使って、隣国から鑑定士を呼ぶ騒ぎになって……」
「そこまでしなくていいって言ったのに……ベッカのおじさま、『絶対に認めさせてやる!』って怒っちゃって……カーリンがこれ幸いと便乗して、自分の魔力量と比べろって言い出しちゃうし……」
「あれはミウが悪いよ!」
「え?わ、私?!」
「身体能力では勝てなくても、自分の得意分野では負けられないって思うもんなんだよ!普通!」
「い、いやぁ……でも、まさかあっちも自分の魔力量を晒してくるなんて思わなかったんだもん……」
「そりゃ、本来は魔法使いにとっての極秘情報のひとつだもんね」
ケヴィンが男として理解できると頭を振ったが、ラダはそこまでして『ミウより強い男』だということを示そうとしていたことに呆れたような声を上げる。
「結果は?」
「……火属性とか水属性とかは判明しなかったけど、めちゃめちゃ魔力量はすごくって!カーリンより少し多くて……さすがにその時は落ち込んでたけどねぇ」
「だが、そのすぐ後に『魔力量を増やす研究をして自分で試すから、成功したらまた勝負だ!』と元気になって去って行ったじゃないか」
つまりあの男は、一度は本当に撤退したのか──必ずミウより『強く』なると宣言して。
「今回はそういう『ミウより強いかどうか』という勝負みたいなことはしませんでしたねぇ」
「そっ…それはっ……」
思わず私は微笑んでしまったが、まあ『勝負』というかミウが『押し負けた』のだけは理解している。
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