すみません。その魔王は親友なので、勝手に起こさないでもらえます?

行枝ローザ

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賢者、仲間の由来を知る。

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実のところ注目されたのはケヴィン自身ではなく、彼に剣技を伝授したはずの『幻の剣聖』だった。
「俺と会った時……あれは何歳だった?」
「えぇと……十三、歳?」
「何で記憶が曖昧なんだ……いやでも、そんなぐらいだったな、確か」
「じゅうさん」
デューンとケヴィンが記憶を刷り合わせるが、私はあまりの衝撃にポカンと口を開けてしまった。

じゅうさん。
十三歳。

『あの時』私は運がなかった。
死んでなお辱められ、そのまま深淵に沈んでしまえばよかったのに、こうしてまた生を受けてさらに記憶も受け継いでしまっている。
だが目の前にいるのは、そんな短命な私の過去よりも遥かに才能に溢れ、しかもそれを無自覚に発揮して夢想してきた若者なのだ。
羨ましくないと言っては嘘になるが、そんな気持ちもバカバカしくなるほどケヴィンは嫌味のない良い青年である。

が、それはともかく。
一緒に旅をしつつ冒険者ギルドの支店がある町まで到着するまでに、成り行きで他の冒険者パーティーを助けることもあったという。
「その時は俺もまだ21歳になったばかりだったんだが、『若い槍使いが粋がって弟を連れて冒険をしている』とか『若いのに弟子を取るほどの実力者』とか誤解されたりして」
「持ってる武器が違うから、しばらく一緒にいたら誤解は解けたんだよね~」
「武器の問題じゃなくて、お前のレベルの問題なんだよ……ギルド登録前の少年が、Cランクレベルの魔獣に怯えることなくあっさりと討伐してしまえば、自分の目がおかしくなったのか常識がひっくり返ったのかと思うさ。そしてキチンと理解してしまえば、それが事実だと認めるしかない」
「え?そうだったの?」
「そうなんだよ……しかも師匠だと思われていた俺の方が全然動きが悪い。お前が一閃で仕留めるところを、俺は他人との連携でようやく斃す。しかもその間にお前は何体もの魔獣や魔物を綺麗に斃すんだからな」
そう言いながらもデューンの口調に恨みや妬み、遺恨はまったくない──むしろ差がありすぎて羨む気にもなれないのかもしれない。
「で、それで何故か僕の故郷には師匠がいて、その人はきっと剣聖だから、国で召し抱えねばならない…とか言われてしまって」
「え?だって……」
「いやぁ……どうしてだろうな~?誰にも教えてもらっていないって言って……あ、でもデューンと一緒に旅を始めた頃、デューンの戦い方を見て少し剣の使い方を変えたりしたから……デューンがお師匠さんだって言えばよかったんじゃない?」
「いや、ケヴィンよ、あの時話したの忘れたのか?魔獣に噛み殺されないようにと槍で防いでいる俺を見て、『剣を横にしておいて、飛び掛かってくるときに口から切ればいいんじゃないか?』とか言ってそのままその場で真っ二つにするとか、師弟とかそういうレベルじゃないって」
『レベル違い』という簡単な言葉で表していいものなのだろうか?このケヴィンという勇者は──


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