すみません。その魔王は親友なので、勝手に起こさないでもらえます?

行枝ローザ

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賢者、『勇者』と認められる。

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それは私が書き写している部分にもある。

『この地清廉にして 精霊の祝福盈る 魔が存在能わず 神聖の祠隠し 永久とわに穢すことなく 命讃え』

おそらくこのまま解き進めれば何という名の神か精霊がこの地に祝福を与え、それが恒久的に続くアイテムは何かということが判明するはずだ。
だがその前に翻訳しているのはこの村を興した村長を始めとした数人の旅人の冒険譚で、それはそれで子供たちが楽しく読んでいる。
そういう楽しみ方があってもいいかと思いつつ、できればこの本はいったい何巻目なのかを知りたいと思ったが、どうやらこれを編纂した者は複数いるらしく、しかも年代も跨いでいるらしく、それを選り分けるのも時間がかかりそうだ。
私ができることはもう単純に翻訳だけとし、そういった詳しい分類や研究に関しては、改めて歴史学者などに託す方がよいだろう。
何せいつまでもここで足止めされているわけにはいかない。

私たちの目的はここにはなかったという、それだけははっきりしたのだから。

さて私に対する態度も3日ほどではさほど変わらなかったが、与えられた居室でせっせと翻訳を続けて10日もすれば緩やかに緊張は解けてきた。
ついでだからと文字を習いたいという者や、シャボン玉遊びを通じて目星をつけた者を寄こしてもらって、原本から写し書をさせたり古代語の読み解き方を教えたりもする。
なかなか飲み込みの早い者もいて、完全にではないが繰り返し出る単語から虫食いのように古代語と現代語の翻訳文字を見つけ出したりして、まるで遊びのように覚えてもらえて私の負担がずいぶん減った。


いつしか日夜は過ぎ、『到着する予定』とケヴィンが目星をつけた日に、ついに王都から厳めしい一団がやってきた。
その中には年若い女性もいる。
おや?と思ったが、周囲がずいぶん気にかけている様子を見て取って、私たちが特に気を回す必要もないと判断した。
「あらやだ」
そんな呟きが聞こえたかと思うと、私の前にいた女性陣がスススッと音もなく目の前から消える。
「ちょっと不快な思いをするかも……ミウ、あんたは絶対前に出ちゃダメよ」
「うん……パトリック賢者様、ちょっと隠れさせてくださいね?」
「え……はぁ……まあ……」
器用なことにその声は私以外の耳には届かなかったようで、他の誰も気にしていない。
だがよくよく観察すれば、少しばかりイラついた雰囲気を出しているのは彼女たちだけではなく、村長と共に調査団を迎えたケヴィンや、私の少し前にいるデューンもまたあまり良い感情を抱いていないようで、冷めた目付きでその女性を見ていた。


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