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賢者、『勇者』と認められる。
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どちらにしても私の作った結界用の魔法陣は役目を終えて粉々に焼け崩れ、他の者の手に渡ることはない。
同じ規模の魔法陣を展開することは可能だが、浄化すべき魔物や魔獣がなければ同じ現象を起こして『大賢者の術』を確認させるのは難しいだろう。
まさかそんなことを王が再現させるはずもないとは思うが、懸念は魔法協会の方にあることをミウが指摘する。
「魔法使いはプライドが高いから……魔法陣展開を紙や布で行うのはレベルが低いと思われているんです」
「レベル?」
「はい。パトリック賢者様はそんなこだわりなんか持っていないですけど、王都の父や母のもとにいる魔法使いや魔術師たちは高魔力と空中で展開できる熟練度があることこそ至上という考え方です。だからこそ魔力があっても術が使えない私のことは、兄妹の中でも落ちこぼれと言われていたんですから」
「はぁ……」
ミウの主観だけで語られたことも私の中ではある程度差し引いて俯瞰すべきだと思っていたが、実際王都で関わり合ったらしいケヴィンたちは同意する表情で頷いた。
そういうものか──
確かに私がまだまだ未熟な魔法使いとして修業していたいつかの前世でも、やはり詠唱をもたついたりつっかえたりして発現できない者を馬鹿にする者もいたし、弟子の中で順位をつけて悦に入っている者もいた。
つまりはそういう連中と変わらないのが、現在の『魔法至上主義』として最高峰にあるらしい。
「……人間は、なかなか高みに上れない者なのですね」
「ええ。私の家族を初めとして、多くの魔法使いはそんなふうに考えているみたいです。賢者と呼ばれる人たちはもっと控えめなのですが、やっぱり魔法のことなんかは普通の人間にはわからないだろうと一線を引いて接するみたいで……だから冒険者として登録するとすぐにどこかのパーティーに所属してしまって、なるべく他の人とは関わろうとしないんです」
「そうね~。アタシに薬草のあれこれとかそれなりに魔法を教えてくれた人も『馬鹿に教える気はない』とか言ってたくらいだし。医術ができる人はその人しかいなかったから村の人たちからそれなりに敬われてはいたけど……好かれてはいなかったわね。たぶん、アタシが弟子のような立場になったから、それなりに受け入れられていたっていう……」
まあ元々の性格も祟ったせいか、ラダの師匠は魔法の才はあっても冒険者としては身を立てられなかったらしい。
今世の私の弟子となったリムや双子のローレンスとマーリウスはちっともそんな性質や態度を取ることがなかったので、ある意味こちらの方が異質なのだろう。
同じ規模の魔法陣を展開することは可能だが、浄化すべき魔物や魔獣がなければ同じ現象を起こして『大賢者の術』を確認させるのは難しいだろう。
まさかそんなことを王が再現させるはずもないとは思うが、懸念は魔法協会の方にあることをミウが指摘する。
「魔法使いはプライドが高いから……魔法陣展開を紙や布で行うのはレベルが低いと思われているんです」
「レベル?」
「はい。パトリック賢者様はそんなこだわりなんか持っていないですけど、王都の父や母のもとにいる魔法使いや魔術師たちは高魔力と空中で展開できる熟練度があることこそ至上という考え方です。だからこそ魔力があっても術が使えない私のことは、兄妹の中でも落ちこぼれと言われていたんですから」
「はぁ……」
ミウの主観だけで語られたことも私の中ではある程度差し引いて俯瞰すべきだと思っていたが、実際王都で関わり合ったらしいケヴィンたちは同意する表情で頷いた。
そういうものか──
確かに私がまだまだ未熟な魔法使いとして修業していたいつかの前世でも、やはり詠唱をもたついたりつっかえたりして発現できない者を馬鹿にする者もいたし、弟子の中で順位をつけて悦に入っている者もいた。
つまりはそういう連中と変わらないのが、現在の『魔法至上主義』として最高峰にあるらしい。
「……人間は、なかなか高みに上れない者なのですね」
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まあ元々の性格も祟ったせいか、ラダの師匠は魔法の才はあっても冒険者としては身を立てられなかったらしい。
今世の私の弟子となったリムや双子のローレンスとマーリウスはちっともそんな性質や態度を取ることがなかったので、ある意味こちらの方が異質なのだろう。
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