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賢者、『魔王(偽)』を討つ。
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結界が溶けて消えた後、地面には黒く爛れたような痕跡以外に、そこに魔物たちの死骸があったとは思えない状態だった。
同時に私の描いた魔法陣の布もそれぞれが焼けて黒焦げになり、二度と結界魔法陣として利用はできない。
もっとも私と同レベルの古代語の理解と発音と魔力量がなければ、立体系魔法陣の発動などできないだろう。
この魔法陣を構築した初期の頃、私だけでなく師匠も数回に1度の頻度でしか完全発動できなかったのだ。
しかもその時にはどんどん魔力を吸い上げられてしまい、兄弟子を閉じ込めたものは、私の魔力に師匠がさらに魔力を重ねて発動し、その成果を見たかったという好奇心ゆえの強制発動だったのである。
おかげで私の魔力量が他の弟子たちよりもやや多かったことが判明したのと、師匠が積極的に構築改良に協力してくれたという副産物があり、結果的にどんな魔法陣でも『一度発動すれば(様々な条件のもと)解除手順をもって魔法陣が消滅する』という付加や、『閉鎖空間を維持する魔力供給を閉鎖空間内で循環して維持する』という言葉遊びのような文言を組み込むことに成功し、常に魔力を注ぐ必要は無くなった。
もっともそのような魔法陣の構築を完全な形で発動まで持っていけるほどの魔力を常に備えていることは難しく、不完全ではあるが『複数人で』同時に発動呪文を詠唱すればいいという文言も追加したはずである。
だから『私』が亡き後でも、誰かがその研究を続けてくれれば────
「……綺麗だな」
「そうですね……」
デューンが最後のひとかけらまで光の中に溶けてしまったのを見て、ポツリと零した。
魔素自体は無くなったわけではなく、透明になるまで浄化され、風に乗ってまた世界を巡る。
留まらぬように 縛られぬように 自然に還るように
そう願って『彼ら』を見送ることが私の使命のような気がして、こうして朝日が昇る前に目覚めたのだけれど。
デューンがこうして私と共に見送ったのも、いつかは何かの意味を持つのかもしれない。
「うわぁ……」
呆然とそこを見ているのはケヴィンだけではない。
ラダもミウも昨日の夜に周囲の木々を賑やかに照らし燃えていた魔物たちがきれいさっぱり消えていることにあんぐりと口を開けて眺めていたが、あの死骸の下敷きになっていた草が瑞々しく茂っているのを見て、強い好奇心を刺激されたらしかった。
「な、何でっ?!あれだけの魔素毒を含んだ汚液がかかったら……普通なら全部枯れて丸禿げになるはずなのにっ……」
「すごい……逆に浄化された魔力が……うわわわわっ!!」
ラダはペタペタと地面や草を撫で触っていたが、ミウは周りに濃く満ちた浄化された魔力を感じ取ったようで、風や身体強化と相性のいい魔力を自然と吸収していったようだ。
残念ながら不可視となった魔力はさすがの私でも見ることはできず、ただ何かがふわふわと漂う感覚しかない。
だがその中で1番喜んでいたのは──
同時に私の描いた魔法陣の布もそれぞれが焼けて黒焦げになり、二度と結界魔法陣として利用はできない。
もっとも私と同レベルの古代語の理解と発音と魔力量がなければ、立体系魔法陣の発動などできないだろう。
この魔法陣を構築した初期の頃、私だけでなく師匠も数回に1度の頻度でしか完全発動できなかったのだ。
しかもその時にはどんどん魔力を吸い上げられてしまい、兄弟子を閉じ込めたものは、私の魔力に師匠がさらに魔力を重ねて発動し、その成果を見たかったという好奇心ゆえの強制発動だったのである。
おかげで私の魔力量が他の弟子たちよりもやや多かったことが判明したのと、師匠が積極的に構築改良に協力してくれたという副産物があり、結果的にどんな魔法陣でも『一度発動すれば(様々な条件のもと)解除手順をもって魔法陣が消滅する』という付加や、『閉鎖空間を維持する魔力供給を閉鎖空間内で循環して維持する』という言葉遊びのような文言を組み込むことに成功し、常に魔力を注ぐ必要は無くなった。
もっともそのような魔法陣の構築を完全な形で発動まで持っていけるほどの魔力を常に備えていることは難しく、不完全ではあるが『複数人で』同時に発動呪文を詠唱すればいいという文言も追加したはずである。
だから『私』が亡き後でも、誰かがその研究を続けてくれれば────
「……綺麗だな」
「そうですね……」
デューンが最後のひとかけらまで光の中に溶けてしまったのを見て、ポツリと零した。
魔素自体は無くなったわけではなく、透明になるまで浄化され、風に乗ってまた世界を巡る。
留まらぬように 縛られぬように 自然に還るように
そう願って『彼ら』を見送ることが私の使命のような気がして、こうして朝日が昇る前に目覚めたのだけれど。
デューンがこうして私と共に見送ったのも、いつかは何かの意味を持つのかもしれない。
「うわぁ……」
呆然とそこを見ているのはケヴィンだけではない。
ラダもミウも昨日の夜に周囲の木々を賑やかに照らし燃えていた魔物たちがきれいさっぱり消えていることにあんぐりと口を開けて眺めていたが、あの死骸の下敷きになっていた草が瑞々しく茂っているのを見て、強い好奇心を刺激されたらしかった。
「な、何でっ?!あれだけの魔素毒を含んだ汚液がかかったら……普通なら全部枯れて丸禿げになるはずなのにっ……」
「すごい……逆に浄化された魔力が……うわわわわっ!!」
ラダはペタペタと地面や草を撫で触っていたが、ミウは周りに濃く満ちた浄化された魔力を感じ取ったようで、風や身体強化と相性のいい魔力を自然と吸収していったようだ。
残念ながら不可視となった魔力はさすがの私でも見ることはできず、ただ何かがふわふわと漂う感覚しかない。
だがその中で1番喜んでいたのは──
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