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賢者、『魔王(偽)』を討つ。
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とりあえずは封印の術が必要だ。
手っ取り早いのは地面に魔法陣を描いてその上に対象物を置けばいいが、どう見てもこの死骸をいったんどこかに置き直して、というのは無理である。
であれば──
「すまないが、戦闘の始まりはどこだろうか?」
「うん?いや、こいつらは分散していたわけじゃなく、何故か固まっていたんだ……王宮の兵のように」
「そうか……それはそれでおかしいが、とりあえず、どこらへんで戦闘になったのか、目安だけでも」
「ああ、それなら」
キョロキョロとデューンが頭を巡らせると、ガサッと茂みが揺れてケヴィンが警戒する気配を漂わせながら現れる。
ただその様子も私たちの姿を認めた途端、溶けるように消えていった。
「大丈夫だ。もう動いているモノはいないよ」
「それはよかった。パトリック賢者が、俺たちが戦い始めた所はどこかと」
「ああ…うん……確か」
デュークが私の質問を繰り返しケヴィンに伝えると、先ほどのデューンと同じようにキョロキョロと視線を彷徨わせてから、スタスタと歩き出した。
「ああ、うん。ここ。ここらへんでウルの唸る声が聞こえて……で、こう駆けて」
ずいぶん離れた樹木の向こうへ行ったらしく、その声は小さい。
それから土を蹴る音がして──まだ姿は見えない。
「で、ここで見つけて。ここらで……」
そう言ってひょこっとケヴィンの優しげな顔が現れる。
それはデューンのすぐ後ろで、わずか2~3歩ほどしか離れていない。
とすれば、魔物たちはほとんどこの場を動かずに討伐されたと見える。
「……おかしいな」
「ああ、おかしい。固まっていたと言ったが、こいつらは整然としていて、俺たちの姿を見てもいきなり飛び掛かってくることもなかった」
「そうそう。なんか指令みたいなのがいたんだよねぇ。ジェネラルオークのなり損ないみたいなの?いや、だけどどこか人間っぽい感じもして……」
人間のような?
ジェネラルのような?
それは──まさか──
「…………人を、喰った?」
ヒトヲ クッタ アレヲ クエバ ツヨク ナレル モット ツヨクナレル ダカラ ヨカッタ
「食べなくて、よかった……と……?」
神獣すら惑わす、何かがあったようだ。
それならばなおさら急がねばならない。
「ではこれから魔法陣を使って、これらを閉じ込めますね」
「は?」
「え?」
「と…閉じ込め……?」
鬱蒼と茂る森の中、皆は私の言っている意味がわからないと目を丸くした。
手っ取り早いのは地面に魔法陣を描いてその上に対象物を置けばいいが、どう見てもこの死骸をいったんどこかに置き直して、というのは無理である。
であれば──
「すまないが、戦闘の始まりはどこだろうか?」
「うん?いや、こいつらは分散していたわけじゃなく、何故か固まっていたんだ……王宮の兵のように」
「そうか……それはそれでおかしいが、とりあえず、どこらへんで戦闘になったのか、目安だけでも」
「ああ、それなら」
キョロキョロとデューンが頭を巡らせると、ガサッと茂みが揺れてケヴィンが警戒する気配を漂わせながら現れる。
ただその様子も私たちの姿を認めた途端、溶けるように消えていった。
「大丈夫だ。もう動いているモノはいないよ」
「それはよかった。パトリック賢者が、俺たちが戦い始めた所はどこかと」
「ああ…うん……確か」
デュークが私の質問を繰り返しケヴィンに伝えると、先ほどのデューンと同じようにキョロキョロと視線を彷徨わせてから、スタスタと歩き出した。
「ああ、うん。ここ。ここらへんでウルの唸る声が聞こえて……で、こう駆けて」
ずいぶん離れた樹木の向こうへ行ったらしく、その声は小さい。
それから土を蹴る音がして──まだ姿は見えない。
「で、ここで見つけて。ここらで……」
そう言ってひょこっとケヴィンの優しげな顔が現れる。
それはデューンのすぐ後ろで、わずか2~3歩ほどしか離れていない。
とすれば、魔物たちはほとんどこの場を動かずに討伐されたと見える。
「……おかしいな」
「ああ、おかしい。固まっていたと言ったが、こいつらは整然としていて、俺たちの姿を見てもいきなり飛び掛かってくることもなかった」
「そうそう。なんか指令みたいなのがいたんだよねぇ。ジェネラルオークのなり損ないみたいなの?いや、だけどどこか人間っぽい感じもして……」
人間のような?
ジェネラルのような?
それは──まさか──
「…………人を、喰った?」
ヒトヲ クッタ アレヲ クエバ ツヨク ナレル モット ツヨクナレル ダカラ ヨカッタ
「食べなくて、よかった……と……?」
神獣すら惑わす、何かがあったようだ。
それならばなおさら急がねばならない。
「ではこれから魔法陣を使って、これらを閉じ込めますね」
「は?」
「え?」
「と…閉じ込め……?」
鬱蒼と茂る森の中、皆は私の言っている意味がわからないと目を丸くした。
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