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賢者、『目的』を見つける。
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彼らは怪我を負っているようには見えず、しっかりとした足取りで手にはこん棒を持っている。
「あ…あんた……い、一体何者……?」
「私?ですか?……新参者ですが、勇者パーティー『白雷の翼』の賢者ですが?」
「けっ……」
いやいや私の羽織るローブを見れば、職業的に賢者か薬師あたりだとわかるだろう──と思ったが、まあ、後方にいる者は武器を持って戦う職業に比べれば似たり寄ったりの格好で、魔法師でも前衛に立って攻撃するタイプでなければ鎧を身につけることもなく、ある意味パーティーのお荷物的な回復役としか思われないかもしれない。
だが『賢者』という職業はただの知識役というわけではなく、修練の度合いによってはパーティーメンバーの攻撃力や防御力を上げたり、結界を張ったり、戦局を有利にするための指示役をしたり、斥候の能力を上げたりと、直接攻撃以外で役に立つものだ。
ランクによっては剣や弓矢以上に強力な魔法攻撃を与えることもできるし、盾よりも強固な守りで仲間を守ることもできる。
そしてたぶん、私は、そのどちらも可能な存在だ。
「けっ…賢者って言ったって、そんなに強いわけじゃねえ!『大賢者』とかいう伝説的な人間でもない限り、パーティーのお荷物だ!だいたい新参者って言ってたんだ…単にガキのお守りで雇われた奴なんだから、大したことねー………」
怒鳴りながら私に殴りかかろうとしていた者がバンッと音を立てて弾き飛ばされ、左右に分かれた村人どころか、仲間の頭上すら超えていく。
中には縄を手にしている者もいて、どうやら私を捕まえようとしていたらしいが、足がすくんだようで動けないらしい。
「うーん……まあ、私を捕まえてどうするのかわかりませんが、まずは捕まえないと難しいですよねぇ」
「ック……このっ……」
どうやら捕獲対象に抵抗された時の対処法を知っていたらしい者がおり、近くにいた若い女性に手を伸ばし──バチンッと音を立てて後ろへとひっくり返る。
「あ、すでにこの方が『村人』だと認識した方に手は出せませんよ?ひょっとして、あなたは村長さんですか?」
「え…あ、ああ、はい。そうですじゃ……」
私が背中に手を当てている老人は思った通りの人物だったようで、おかげでひとりひとりに守りの術を施す必要がなくて済んだ。
彼の足元には私がとっさに展開した魔法陣があり、それには『この村の者に危害を加える者は弾き飛ばされる』と刻まれている。
古代語での発動のため、たとえ魔法陣の呪文を読める者がいたとしても解呪や干渉を加えることは不可能だ。
当然のように私自身は作成者特典で除外対象であり、更に村長と判明した老人に触れているため、まったく影響はない。
この術は村人を判別できることが条件のひとつなのだが、サッと一瞥したところ村はあまり広い感じではなく、特に大人たちはここに集まっていると見えたため、問題なく発動したというわけだ。
そしてまたひとり、ふたりと弾き飛ばされた後、残った若者が怪我を装うのを止め、気絶している仲間を見捨てて全速力で村の方ではない道を選んで逃げ出した。
「あ…あんた……い、一体何者……?」
「私?ですか?……新参者ですが、勇者パーティー『白雷の翼』の賢者ですが?」
「けっ……」
いやいや私の羽織るローブを見れば、職業的に賢者か薬師あたりだとわかるだろう──と思ったが、まあ、後方にいる者は武器を持って戦う職業に比べれば似たり寄ったりの格好で、魔法師でも前衛に立って攻撃するタイプでなければ鎧を身につけることもなく、ある意味パーティーのお荷物的な回復役としか思われないかもしれない。
だが『賢者』という職業はただの知識役というわけではなく、修練の度合いによってはパーティーメンバーの攻撃力や防御力を上げたり、結界を張ったり、戦局を有利にするための指示役をしたり、斥候の能力を上げたりと、直接攻撃以外で役に立つものだ。
ランクによっては剣や弓矢以上に強力な魔法攻撃を与えることもできるし、盾よりも強固な守りで仲間を守ることもできる。
そしてたぶん、私は、そのどちらも可能な存在だ。
「けっ…賢者って言ったって、そんなに強いわけじゃねえ!『大賢者』とかいう伝説的な人間でもない限り、パーティーのお荷物だ!だいたい新参者って言ってたんだ…単にガキのお守りで雇われた奴なんだから、大したことねー………」
怒鳴りながら私に殴りかかろうとしていた者がバンッと音を立てて弾き飛ばされ、左右に分かれた村人どころか、仲間の頭上すら超えていく。
中には縄を手にしている者もいて、どうやら私を捕まえようとしていたらしいが、足がすくんだようで動けないらしい。
「うーん……まあ、私を捕まえてどうするのかわかりませんが、まずは捕まえないと難しいですよねぇ」
「ック……このっ……」
どうやら捕獲対象に抵抗された時の対処法を知っていたらしい者がおり、近くにいた若い女性に手を伸ばし──バチンッと音を立てて後ろへとひっくり返る。
「あ、すでにこの方が『村人』だと認識した方に手は出せませんよ?ひょっとして、あなたは村長さんですか?」
「え…あ、ああ、はい。そうですじゃ……」
私が背中に手を当てている老人は思った通りの人物だったようで、おかげでひとりひとりに守りの術を施す必要がなくて済んだ。
彼の足元には私がとっさに展開した魔法陣があり、それには『この村の者に危害を加える者は弾き飛ばされる』と刻まれている。
古代語での発動のため、たとえ魔法陣の呪文を読める者がいたとしても解呪や干渉を加えることは不可能だ。
当然のように私自身は作成者特典で除外対象であり、更に村長と判明した老人に触れているため、まったく影響はない。
この術は村人を判別できることが条件のひとつなのだが、サッと一瞥したところ村はあまり広い感じではなく、特に大人たちはここに集まっていると見えたため、問題なく発動したというわけだ。
そしてまたひとり、ふたりと弾き飛ばされた後、残った若者が怪我を装うのを止め、気絶している仲間を見捨てて全速力で村の方ではない道を選んで逃げ出した。
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