すみません。その魔王は親友なので、勝手に起こさないでもらえます?

行枝ローザ

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賢者、『目的』を見つける。

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「魔族は人間族とは違う。そもそも、人間は小さな分身を作るが、それは『雌』という個体だけだ。しかも分身は本体と違うモノだ。何故同じ分身じゃない?それが不思議だ……しかも、それを『可愛がる』というあの行為が分からん。単に小さくて能力が無くて喰っても自分が成長できないから、その『育てる』ということをしてから喰うのかと思ったら、その分身の『つがい』が見つかるように本体が世話をしたり、分身がさらに分身を出したり……それだけはずっと変わらん。あと『墓』とかいう容れ物はいったい何だ?能力の無くなった『老人』という状態の人間を喰っても個体は成長しないかもしれんが、少しぐらい喰えば能力が取り込めるんじゃないのか?だいたい分身の方が『魔石』…は人間にはないのか。魂?とかいう核がなくなっても、本体はそれも箱に入れて土の中に入れるではないか!保存するためかと思ったら、本体が朽ちようとしてもそれを出して喰らうこともない……お前たちはまったく進化しないのに、分身を使わない意味が分からん……」
長々と質問を重ねられたが、私の方が意味が分からん。

まず魔族と違い、人間は魔族のように魔石ならぬ魂が抜けても、その身体が塵となることはない。
だからといって遺体を食することなく、丁寧に扱い埋葬するのが普通である──私のかつての死後はともかくとして。
確かに『栄養』として動物の肉を食べはするが、それで人間として何かの能力が上昇するわけではない。
むしろ『死なないため』に、生命を維持するために、食べ物を摂取はするが──魔族は自分から分裂したモノを再び取り込むことで強くなるということは理解した。
おそらく『生物』としての違い以前の問題ではないのだろうか。
「だが……お前たちは分裂すればするほど、『違うモノ』になる。時々『同じ個体』がふたついることがあるが、それもまったく同じことをするわけではない」
「……それは双生児のことを言っているのか?」
「そーせーじ?そう呼ぶものなのか?そうでなくても、雌の分身なのに同じ雌ができないのは何故だ?何故雌から雄が出てくる?だいたい形が違う、色が違う、大きさが違う……おかしなことばかりだ」
「いや、そこまでは私にも分からんが……確かに、人間族以外だと見た目の個体差がほとんど無いものな……」

野花は種の基になった野花と同じ形に成長する。
動物は親と同じ姿かたちで産まれる。
魔獣も同様だ。
精霊はそれぞれの個性があるのか、ノームたちの見た目や大きさはまちまちだったが──やはりそれは種族の違いだろう。

世界はまだまだ私の知らないことで満ちている。


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