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賢者、『目的』を見つける。
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皆がスンッとした表情になった。
それはそうだろう──だいたいそういった場面において犠牲になるのは、いつだってオンナである。
人間だけではない。
ウルが同族だと思っていた小型ウルフなど小さな魔獣たちは食糧として蹂躙されるが、半人半馬や半人半蛇のように人間を惑わすような体躯をしているモノであれば、見境なく襲って見るも無残な有様にするというが、男がその標的にされるなど聞いたことがない。
だからこそ、あいつは──『魔王』は恐怖を煽るために、『どこかの過去の私』を背後から切りつけて死体までも辱めようとした者たちに対して、『同じような目に合わせて』から殺されるに任せ、そのままどこかへ放り出したんだろう。
えげつないことをする──とは思うが、同情はしない。
あの時の私はこのメンバーの誰よりも幼く、世間知らずで、夢だけで生きていけると思っていた愚か者であり、それに付け込んだ意地汚くさらに愚かな者たちに気持ちを寄り添わせるほど、今の私はお人好しではなかった。
だがそんな話はきっとこの国の冒険者たちにとってはいささか教訓めいたものではあるが、『冒険者の風上にも置けない愚行の輩』として当たり前に語り継がれているらしく、「だから今ではよほどの恥知らずでもない限りは、野盗じみた真似をする奴なんかいない」らしいのだが、どうやら私やミウはその『恥知らず』が根城とする宿に入ってしまったらしい。
「ほんっと、そういうとこは引きが強いわよねぇ……ミウは」
「えへへ~。おかげでパトリック賢者様に会えたんだし!結果的には従魔法違反の冒険者崩れパーティーを一網打尽にできたんだから!」」
「そこなのよねぇ……何でか最終的に『結果オーライ』って感じで終わるのよねぇ、ミウは」
「えへへ~」
まったく…と呆れたような表情でラダは、まだ少女感の抜けないミウの頭を撫でた。
その姿はまるで姉妹のようで、見ているこちらまでほんわかとしてくる。
そういうふうに思うのは私だけではないらしく、ケヴィンはいつものようにニコニコと、そしてデューンも心なしか眼差しを和らげ唇の端を僅かに上げてふたりを見つめた。
それはそうだろう──だいたいそういった場面において犠牲になるのは、いつだってオンナである。
人間だけではない。
ウルが同族だと思っていた小型ウルフなど小さな魔獣たちは食糧として蹂躙されるが、半人半馬や半人半蛇のように人間を惑わすような体躯をしているモノであれば、見境なく襲って見るも無残な有様にするというが、男がその標的にされるなど聞いたことがない。
だからこそ、あいつは──『魔王』は恐怖を煽るために、『どこかの過去の私』を背後から切りつけて死体までも辱めようとした者たちに対して、『同じような目に合わせて』から殺されるに任せ、そのままどこかへ放り出したんだろう。
えげつないことをする──とは思うが、同情はしない。
あの時の私はこのメンバーの誰よりも幼く、世間知らずで、夢だけで生きていけると思っていた愚か者であり、それに付け込んだ意地汚くさらに愚かな者たちに気持ちを寄り添わせるほど、今の私はお人好しではなかった。
だがそんな話はきっとこの国の冒険者たちにとってはいささか教訓めいたものではあるが、『冒険者の風上にも置けない愚行の輩』として当たり前に語り継がれているらしく、「だから今ではよほどの恥知らずでもない限りは、野盗じみた真似をする奴なんかいない」らしいのだが、どうやら私やミウはその『恥知らず』が根城とする宿に入ってしまったらしい。
「ほんっと、そういうとこは引きが強いわよねぇ……ミウは」
「えへへ~。おかげでパトリック賢者様に会えたんだし!結果的には従魔法違反の冒険者崩れパーティーを一網打尽にできたんだから!」」
「そこなのよねぇ……何でか最終的に『結果オーライ』って感じで終わるのよねぇ、ミウは」
「えへへ~」
まったく…と呆れたような表情でラダは、まだ少女感の抜けないミウの頭を撫でた。
その姿はまるで姉妹のようで、見ているこちらまでほんわかとしてくる。
そういうふうに思うのは私だけではないらしく、ケヴィンはいつものようにニコニコと、そしてデューンも心なしか眼差しを和らげ唇の端を僅かに上げてふたりを見つめた。
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