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賢者、精霊王に会う。
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正確に言えばラダはすでに二十歳の女性だが、子供に毛が生えた程度のケヴィンやミウと共に子供のノームたちにくっついて寝ているのを見ると、なぜか同世代に見えて微笑ましく思う。
そんなパーティーメンバーと比べて少し年上のデューンは、一体どうして勇者パーティーに組むこととなったのだろうか。
出会ってまだ間もない私が尋ねるのは失礼ではないだろうか──そう思っていると、逆にデューンから打ち明け話を始められてしまった。
「……さっきの長の話は深かったな。ラダとケヴィンは北の地方出身なんだが、俺は西の地方だ。たぶん俺のいた町はこの国の中でも信仰心が篤いので有名で、司祭の中でも最高職に就くような者が排出されるぐらいなんだが……」
「ということは、デューンも本当は司祭職に就くはずだった……?」
「まあ、すべての子供たちが神学校に通わされるような町だったから、適性があるとかないとか関係はないけどな。両親どころか大人すべてが信仰心の塊で、神に連なる者としてもちろん精霊たちも崇め奉る対象だったよ」
だが目の前に転がっている精霊族のノームたちは、皆酒に酔い、美味い肉に舌鼓を打ち、子供たちはウルやシュンゲルと共に転がりまわっている。
その姿は厳かでも、静謐でもまったくない。
確か教典には精霊たちは人とはまったく異なる言語を持ち、神秘性を湛え、世俗などにはまったく興味を持たない種族であると書かれている。
しかし実際は魔獣であるウルやシュンゲルと仲良く遊び、人間族である私だけでなく勇者パーティーの面々とも縁を結んだ。
むしろ進んで。
「縁ある者がノームの水を飲めば甘い。当然のことだ。そして縁ある者がロダムスの村に辿り着く。それもまた、当然のこと」
むほほ…と笑いながらティファムは、その小さな体に似合わぬ健啖さで干し果物を平らげていく。
いや食べている量はさすがに私たち人間族の男たちと比べたら少ないだろうが、黙々とデューンと酒を酌み交わしているかなり大柄なノームよりも食べているのではないだろうか。
「ノームと縁のある……つまり、ウル以外の小型ウルフ族はこの村には……?」
「うむ。白い友はまずカヤシュと出会った。だが彼はカヤシュを狩らず、カヤシュは白い友を連れて戻った。ロダムスの長として、試しの水を与えた。白い友はたちまちロダムスの友となった。精霊王も祝福した。だが白い友以外の一族はノームを狩る。我らは逃げる。捕らえられる運命の者もいた。精霊王は摂理と言った。だがその摂理の者は、ロダムスの村には入れなかった」
ノームの言葉はわかるようで、わからない。
とにかくロダムスの──ノームたちと縁があったのは、小型ウルフ族の中でもウルのみで、一族の他のウルフは食糧としてノームたちに出会うことはあっても、『友』として招かれたモノはいないということなのだろう。
そんなパーティーメンバーと比べて少し年上のデューンは、一体どうして勇者パーティーに組むこととなったのだろうか。
出会ってまだ間もない私が尋ねるのは失礼ではないだろうか──そう思っていると、逆にデューンから打ち明け話を始められてしまった。
「……さっきの長の話は深かったな。ラダとケヴィンは北の地方出身なんだが、俺は西の地方だ。たぶん俺のいた町はこの国の中でも信仰心が篤いので有名で、司祭の中でも最高職に就くような者が排出されるぐらいなんだが……」
「ということは、デューンも本当は司祭職に就くはずだった……?」
「まあ、すべての子供たちが神学校に通わされるような町だったから、適性があるとかないとか関係はないけどな。両親どころか大人すべてが信仰心の塊で、神に連なる者としてもちろん精霊たちも崇め奉る対象だったよ」
だが目の前に転がっている精霊族のノームたちは、皆酒に酔い、美味い肉に舌鼓を打ち、子供たちはウルやシュンゲルと共に転がりまわっている。
その姿は厳かでも、静謐でもまったくない。
確か教典には精霊たちは人とはまったく異なる言語を持ち、神秘性を湛え、世俗などにはまったく興味を持たない種族であると書かれている。
しかし実際は魔獣であるウルやシュンゲルと仲良く遊び、人間族である私だけでなく勇者パーティーの面々とも縁を結んだ。
むしろ進んで。
「縁ある者がノームの水を飲めば甘い。当然のことだ。そして縁ある者がロダムスの村に辿り着く。それもまた、当然のこと」
むほほ…と笑いながらティファムは、その小さな体に似合わぬ健啖さで干し果物を平らげていく。
いや食べている量はさすがに私たち人間族の男たちと比べたら少ないだろうが、黙々とデューンと酒を酌み交わしているかなり大柄なノームよりも食べているのではないだろうか。
「ノームと縁のある……つまり、ウル以外の小型ウルフ族はこの村には……?」
「うむ。白い友はまずカヤシュと出会った。だが彼はカヤシュを狩らず、カヤシュは白い友を連れて戻った。ロダムスの長として、試しの水を与えた。白い友はたちまちロダムスの友となった。精霊王も祝福した。だが白い友以外の一族はノームを狩る。我らは逃げる。捕らえられる運命の者もいた。精霊王は摂理と言った。だがその摂理の者は、ロダムスの村には入れなかった」
ノームの言葉はわかるようで、わからない。
とにかくロダムスの──ノームたちと縁があったのは、小型ウルフ族の中でもウルのみで、一族の他のウルフは食糧としてノームたちに出会うことはあっても、『友』として招かれたモノはいないということなのだろう。
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