すみません。その魔王は親友なので、勝手に起こさないでもらえます?

行枝ローザ

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賢者、精霊王に会う。

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モコモココロコロと毛玉たちが転がるように入り口をくぐると、次々と小さなノームの姿に戻る。
ラダの索敵反応から森にはすでに天敵とも言える小型ウルフだけでなく他の魔獣の類もいないらしいが、ノームとしては結界である村の境界線から外に出るには、あの毛玉姿がお決まりらしい。
「なっ、なっ、なっ、なっ……」
そのラダが小さな人形のようになったノームたちを見て固まっている。
デューンはあまり表情が変わっていないが、ケヴィンはミウに劣らず楽しげな表情をしていて、何とも楽しいパーティーだ。
「すごいなぁ~!!精霊族は魔獣より人前に現れないって言われてるのに。これがノームかぁ……」
「ねぇ~!かっわいいでしょう?」
ニコニコと笑うミウの腕の中には、カヤシュだけでなく妻になる予定のキッチャムまで抱き込まれて幸せそうにふわふわと笑っている。
「キッチャムの妻~。おかえり~おかえり~」
「カヤシュの妻!早い帰り!嬉しい!嬉しい!」
どちらもそれぞれの言葉でミウの訪れを喜んでいる。
そして私の周りにも──
「ロダムスの友!ロダムスの友!新しい友を連れてきた!甘露を!甘露を!」
賑やかに踊りまわっていたが、パァッと散るようにケヴィンやラダ、そしてデューンの側に駆け寄ると、それぞれがやはり雨ひと粒ぐらいしか入らないような小さな器を差し出して、自分の露を受け取ってもらおうと目をキラキラさせている。
「えっ……えっと……」
さすがに困ってケヴィンが私の方を見たが、さすがにこれについて助言できることはない。
何せ私だってノームにあったのはこの間が初めてだったし、まさかノームたちの持つあの甘露水が契約の条件とは知らなかったのだから。
しかもそれは魔獣たちと契約する『テイム』とは少し違うような気もする。
何故なら──
「よく来た。ロダムスの友、パトリックの友よ。いずれかの者と縁を結べ!縁ある者ならば甘く、無い者は苦い。苦ければ、次の縁を選ぶべし!」
即席で作られた台座の上に昇った村長が、その小さな身体に似合わぬ大きな声で告げた。
「え、縁……?」
まさかそんな理屈があったとは……
初めて聞く話で、私もミウも思わず村長を注視してしまう。
「うむ……ロダムスの友は、定められた友。カヤシュの友も定められた友。わかる時がある。わからない時もある。今はわからない。友の友よ。ロダムスの者と縁を結べ!」
「つまり『縁を結ぶ』というのは決定事項ではあるが、それが誰なのかはわからない……と?」
「うむ!さすがはロダムスの友、パトリック!ロダムスの村に至るは縁ある者のみ。ロダムスの友は白い友と出会い、ロダムスの友となった。そしてまたロダムスの者と縁繋ぐ者を連れてきた。精霊王が会うため。選べ!縁を繋げ!今宵は祝おう!」
私たちの事情など聞くこともなく、村長のティファムは杖を振り上げて言葉を続けると、期待を込めた目でノームたちがグッとケヴィンたち三人に迫る。
「え…えぇと……」
恐る恐るという感じでラダが可愛らしい女の子姿のノームから器を受け取り、恐々と口をつける。
ケヴィンもふたりでひとつの器を捧げるその手から受け取り、デューンは皆の中でもひと回り大きいノームから器を受け取った。
「……んっ」
「…んぅっ?!」
「こ、これは……」
パァァッとそれぞれの身体が光ったが、それは長く続かずにサッと消える。
三人とも苦さに噎せる様子もなく、うっとりと甘露水を味わっているようだ。
「さすがだ。勇者たちよ。ロダムスの友と同じく、ロダムスの村とも繋がる!森に迷いし時、いつでもロダムスの者を呼べ!」
「おう!」
元気良く返事をするのは、わかっているのかいないのか、やはりパーティーのリーダーであるケヴィンだった。


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