すみません。その魔王は親友なので、勝手に起こさないでもらえます?

行枝ローザ

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賢者、王都から旅立つ。

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そうやって見やればやはりケヴィンは心配そうな顔をして、国王陛下に向かって手を上げ──
「では私どもが魔王を探しつつ、進行方向に討伐対象がいれば排除します。では!」
「ムガ~~~~!ンムゥ~~~~!!!」
「いつもの通り、向かう先は勝手に連絡しますので!速やかに回収よろしく!」
「ンンムゥ~~~~~~!!!」
「はい!行きますよっ!!失礼いたしますわ、国王陛下!………この度は、ありがとうございます」
片腕でケヴィンを羽交い絞めにしてもう片手で余計なことを言わないようにと、顔の下半分をガッシリとホールドしたデューンが思いもよらない早口で口上を述べる。
次いでラダがピシッと敬礼し、ミウが冒険者服の裾を掴んで簡易的な淑女の礼を施した。
最後に付け加えたのは個人的な感謝のようで、壊された床の側に捨て置かれる魔術師長の方を揃って見る。
「ああ、出立は明日の朝にするがよい。これより新たな冒険者ギルドの長と、宮廷魔術師長の選定を行わねばならぬので、煩い口は塞いでおきたいゆえ……『白雷の翼』の面々には面倒をかけるが、よしなに」
国王の言葉に最敬礼とはいかないまでも、私は自分の胸に片手を当てて立礼をするが、薄目を開けて伺えば、パーティーの皆はそれぞれに簡易的な礼のままその言葉を受けていた。


ケヴィンはやっと解放されて溜め息をついていたが、デューンと並んでギルドの依頼掲示板へ向かうと、いくつかの依頼の紙を手に取る。
「……もう……みんな困っているなら、全部引き受けたって……」
「勇者パーティーが王命で引き受けたものは他の冒険者が請け負うことができないし、万が一達成したとしても冒険者ギルドが支払う報酬より何割も低くなったり、討伐部位もその時の需要ではなく固定で取り引きされるのはわかっているだろう?ある程度の難易ランクの依頼ものを残しておかなければ、後続者も育たない。お前を筆頭として俺たち勇者パーティーが他の冒険者よりも抜きんでていることは否定しないが、ミウ以外はSSSトリプルスペシャルなんて前代未聞なランク付けになってしまう可能性がある……人外にでもなるつもりか?」
さすがに人間の勝手なランク付けなど魔族に意味はないが、デューンがケヴィンを諭すのはわかる。
20枚ほどの依頼書の中、デューンが素早く吟味して半分をまた掲示板に貼り直したので、ケヴィンの手の中に残る依頼書を覗き込んだ。


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