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賢者。勇者剣士と合流する。
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思わずグッと言葉に詰まる。
ミルベルは何となく私と魔王の間に何かしらあると察しているようだが、まさか私自身に今まで生きてきた人生の記憶があるとは思ってはいないはずだ。
しかしその話を勝手にしたとも思えないし、やはり先ほどの不思議な光の中で私が聞いた声を、ケヴィンも聞いたとしか思えない。
しかしあいつも待ちくたびれていたのか。
そう思うと少しだけ頬が緩む。
「あ、あの……パトリック賢者?あの……」
「えっ……あっ、ああ……あの……何という、か……」
広義的に何世代にも渡って出会い続けているというのは──
「い、因縁がありまして……魔王、と……その、せ、先祖的、に?」
嘘は言っていない、たぶん。
正確には『先祖』ではなく、生まれ変わる私自身の『魂』に因縁があるのだけれど。
「それは……ミルベルと同じように?」
「えっ……ええ……まあ……それと酷似しています…ね……」
似ているようで違うけれど。
そんな私の声が聞こえているかのようにケヴィンはほんのわずか訝しそうな顔をしているが、その違和感が何かまではよくわからないようだ。
正直に話していいのかどうか、私自身にもよくわからない。
話したところで信じてもらえるとは思えないが、逆に信じられて「では魔王が今現在、どこにいるかわかるはずだ」と思われるのも面倒である。
だいたい私が魔王を見つけるのではなく、あちらが私を何故か見つけるのだ。
だが人間というのは得てして自分の都合の良いように聞いた情報を捻じ曲げ、自分のために事象が動くと思い、簡単に手柄も名誉も褒美も手に入ると思っている。
私はそんなに自己犠牲が強いわけではないので、申し訳ないが魔王との繋がりを暴かれたとしても、自らを生贄に魔王をおびき寄せるつもりはない。
だからとりあえずはこのまま、魔王との関係は曖昧なままでいいのかな、と今はまだ思う。
ミルベルは何となく私と魔王の間に何かしらあると察しているようだが、まさか私自身に今まで生きてきた人生の記憶があるとは思ってはいないはずだ。
しかしその話を勝手にしたとも思えないし、やはり先ほどの不思議な光の中で私が聞いた声を、ケヴィンも聞いたとしか思えない。
しかしあいつも待ちくたびれていたのか。
そう思うと少しだけ頬が緩む。
「あ、あの……パトリック賢者?あの……」
「えっ……あっ、ああ……あの……何という、か……」
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「い、因縁がありまして……魔王、と……その、せ、先祖的、に?」
嘘は言っていない、たぶん。
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「それは……ミルベルと同じように?」
「えっ……ええ……まあ……それと酷似しています…ね……」
似ているようで違うけれど。
そんな私の声が聞こえているかのようにケヴィンはほんのわずか訝しそうな顔をしているが、その違和感が何かまではよくわからないようだ。
正直に話していいのかどうか、私自身にもよくわからない。
話したところで信じてもらえるとは思えないが、逆に信じられて「では魔王が今現在、どこにいるかわかるはずだ」と思われるのも面倒である。
だいたい私が魔王を見つけるのではなく、あちらが私を何故か見つけるのだ。
だが人間というのは得てして自分の都合の良いように聞いた情報を捻じ曲げ、自分のために事象が動くと思い、簡単に手柄も名誉も褒美も手に入ると思っている。
私はそんなに自己犠牲が強いわけではないので、申し訳ないが魔王との繋がりを暴かれたとしても、自らを生贄に魔王をおびき寄せるつもりはない。
だからとりあえずはこのまま、魔王との関係は曖昧なままでいいのかな、と今はまだ思う。
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