すみません。その魔王は親友なので、勝手に起こさないでもらえます?

行枝ローザ

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賢者。勇者剣士と合流する。

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ミウに渡されたブレスレットはほんのりと光って、付けると自分の防御力がわずかに増加するのを感じた。
「……な、なんだ……このブレスレット……これなら剣のひと振りで敵前衛ぐらいは吹き飛ばせそうな……すごい……」
「えっ、えぇっ……何か……これなら……上位薬の調合もできそう……それに、目も……良くなってる……?」
「あっ……ああ……俺もだ。まるで身体が鋼のようだ……ミウの強弓でもなければ貫通しないという確信がある……」
「わ、私も目が……不思議な色も見える……気配も……すご……」
そういうミウの目が輝き、ジッと空の彼方を見つめる。
どうやらそれぞれに何らかの加護が付与されたらしい。
「これがノームの手になるブレスレットの効果か……なるほど……こういう意味か……」
私の手による物ではない古代語の本の中に『精霊の加護を受くる者、勇者と称えられん』とあった。
それがどの精霊で、どんな加護なのか、どうやって与えられたのかがまったく無い、意味不明の短い文章だったため、今の今まで忘れていたのである。
いや、実際はこんなふうに一人一人違った加護になるのかはわからないが──おそらくはミウからいないパーティー仲間3人の話を聞き、そして私とミウのことは直接話して、こういった加護を与えようとしてくれた気がする。
今さらながら私とミウはすごい幸運を得たのかもしれない。


ルルカはもう無理やりつけられていた服従の首輪はミルベルの手で取れたので、正規の『鍵』を持っている者でも探知をすることはできないということだった。
そしてまた偽の『従魔契約の首輪』を外してしまったウルを念のためミルベルに預け、私とミウの他、デューンとラダを伴って宿屋へ戻ることに決まる。
正直なことにケヴィンは恋人の下にいるべきか、それとも仲間と一緒に悪の巣窟かもしれない宿屋に一緒に行くべきかと迷う様子を見せた。
どちらも守りたい──でも、どちらかしか選べない。
当然ながら私たちはケヴィン以外の満場一致で、ミルベルの店に泊まるようにと勧めた。
もちろん久しぶりの再会をゆっくりとしてもらいたいという思いと、ルルカだけでなくウルもこの店にいることで、私たちの部屋に押し入るよりもここに盗賊が来る可能性もある。
そう指摘するとケヴィンは意を決したように頷いた。
「……わかった!ベル!君のことはボクがちゃんと守るから!」
「はいはい。うん、期待してる。まあ、今日は皆で上にいれば大丈夫だし!念のため庭も閉じておくし」
「……なんか、雑じゃない?僕への期待度……」
「ソンナコトナイヨー」
たぶんミルベルには一族に伝わる防御法がちゃんとあるのだろうが、それを素直に話すつもりはないらしい。
少し話した感じでは他人への関心が薄そうに思ったが、あんがい恋人のことを立てるタイプらしかった。


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