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賢者。勇者剣士と合流する。
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ケヴィンという青年はとても人懐こく、本当に『勇者』なのだろうか?と思うほど純朴だ。
少なくとも私の知っている『勇者』を名乗る者は皆横柄で、過剰なほど自信家であり、それゆえに人を惹きつけたとも言える。
しかし目の前でミルベルに優しい眼差しを投げかけ、ウルの真っ白い毛皮をもふもふと撫で可愛がる青年はとても『勇者』という立場を振りかざして下々の者をこき使うような輩とは一線を画していた。
「……ふふっ。いい人でしょう?というか、なんか可愛いでしょう?SランクどころかAランクの冒険者たちよりも偉そうじゃないんです。おかげで私はけっこう……」
救われました。
声に出さないその言葉はミウの口の中で消えてしまったのだろうが、表情が物語っている。
『勇者』の称号は伊達や酔狂で与えられるものではない。
そんな者に認められ、求められ、そして結果も出している。
「良い子ですね、ミウは」
「うぅ~……なんで子供扱いなんですかぁ……」
思わず集落の子供たちを褒めるように頭を撫でると、むぅっとほっぺたを膨らませつつも照れた口元が緩んでいる。
「ふふっ……私にしてみれば、ミウはまだまだ子供ですから」
「そうだな」
私が手を離すと続いてデューンがその大きな手でミウの頭をガシガシと撫でた。
「えっ?何?何やってるの?『ミウが賢者様見付けたで賞』授与?アタシも撫でる~!」
ラダが幼なじみを放り出して、乱れた髪を直す間もなくミウの頭を撫でる。
そして次にはミルベルも控えていて──結局ミウは最後にぽふんとウルにまで頭に肉球を乗せられて褒められるというひと時となった。
それから問題は今夜からの宿ということになる。
今までは従魔がいなかったから私たちが泊まっているのとは違う宿屋を定宿に決めていたらしいが、今回は部屋が空いていなかったということでケヴィンはミルベルのところに泊まり、デューンとラダはまだ帰って来たばかりで宿を探しているということだった。
「あ…じゃぁ……」
「そうですね」
私とミウはみなまで言わずに通じ合い、うんと頷く。
「あのね。ほら、ウルちゃんがいるからさ、動物いても大丈夫な宿屋に部屋を借りてるんだけどね……その、ベッドはあるから、一緒に……どう?」
詳しい話はミルベルの店が安全だとは思うが、昨夜のようにまた突撃があるかと身構えて夜を過ごすよりは、仲間がいる方が心強いだろう。
少なくとも私の知っている『勇者』を名乗る者は皆横柄で、過剰なほど自信家であり、それゆえに人を惹きつけたとも言える。
しかし目の前でミルベルに優しい眼差しを投げかけ、ウルの真っ白い毛皮をもふもふと撫で可愛がる青年はとても『勇者』という立場を振りかざして下々の者をこき使うような輩とは一線を画していた。
「……ふふっ。いい人でしょう?というか、なんか可愛いでしょう?SランクどころかAランクの冒険者たちよりも偉そうじゃないんです。おかげで私はけっこう……」
救われました。
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そんな者に認められ、求められ、そして結果も出している。
「良い子ですね、ミウは」
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「えっ?何?何やってるの?『ミウが賢者様見付けたで賞』授与?アタシも撫でる~!」
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そして次にはミルベルも控えていて──結局ミウは最後にぽふんとウルにまで頭に肉球を乗せられて褒められるというひと時となった。
それから問題は今夜からの宿ということになる。
今までは従魔がいなかったから私たちが泊まっているのとは違う宿屋を定宿に決めていたらしいが、今回は部屋が空いていなかったということでケヴィンはミルベルのところに泊まり、デューンとラダはまだ帰って来たばかりで宿を探しているということだった。
「あ…じゃぁ……」
「そうですね」
私とミウはみなまで言わずに通じ合い、うんと頷く。
「あのね。ほら、ウルちゃんがいるからさ、動物いても大丈夫な宿屋に部屋を借りてるんだけどね……その、ベッドはあるから、一緒に……どう?」
詳しい話はミルベルの店が安全だとは思うが、昨夜のようにまた突撃があるかと身構えて夜を過ごすよりは、仲間がいる方が心強いだろう。
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