すみません。その魔王は親友なので、勝手に起こさないでもらえます?

行枝ローザ

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賢者、仲間を侮られる。

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ちなみにどうして第二王女が、国王陛下との謁見に同席したかというと、むろん陛下が暴露してくれたように彼女が同席を強請ったからというのもあるが、国王代理として王太子はただいま王太子妃同行で外遊に出ており、第一王女は今の私の出身国であるローシャル・ダヴィッテ国の第二王子へ輿入れしているため、王妃の代理という名目でそこにいた。
まさか王女ともあろう者が国王に拝謁する機会を、自分自身のお見合いというか婿定めの場と見なしているアホさ加減は、話とすればただの笑える一節となろうが──うん、こうして己の身に降りかかるとただの迷惑極まりない行動である。
私には恋人も妻もいないが、決まった相手がいる若者としては、権力を振りかざしてくる王侯貴族などに目を付けられたくなかったに違いない。
そして今や臣下の前で赤っ恥をかかされた国王も姫君もそれぞれに怒りの表情だが、その対象は一方通行である。
国王は自分の娘である第二王女に、第二王女は私に。
そしてこの私が国王に向かって面倒な女に目を付けられる前に片付けておいてくれなかった怒りを向ければ、素晴らしい大三角形が出来上がるのだろうが──ハッキリ言って出来の悪い子を持った親への同情しか向け得ない。
そして方角違いのミウが、物の見事な嫌悪の表情で王女を睨みつけているとあっては、これ以上の謁見は時間の無駄だろう。
目的のひとつであった勇者パーティー『白雷の翼』のメンバーのうち、リーダーであるケヴィンという青年がまだ王都に着いていないというので、他のメンバーは王宮内の冒険者ギルドで待つという伝言をミウに寄こしてきたのだ。
とすれば自己紹介と面通しを叶えただけで今日はもうここにいる必要はなく、この不愉快極まりない品定めの時間を切り上げようと、私はミウの背中をトントンと宥めるように叩く。
そこで自分を取り戻したミウはサッと伯爵令嬢としての仮面をつけて殺気を消し、私も虚ろな笑みを浮かべて退出を願った。
「……では『白雷の翼』のケヴィン殿が戻り次第、パトリック第一賢者殿を『大賢者』として勲章しよう。爵位授与は辞退されるとの気持ちは変わらぬか?」
「……ええ。僭越ながら、この浅学非才の我が身には余る名誉であり、また三国連名での称号授与とのこと……一国のみ授与いただくのは均衡を崩しかねません」
何の均衡を──というのは立場によって変わるだろう。
元々『ローシャル・ダヴィッテ国』と『ローシャル・ルーフェル国』は兄弟国であるのだから、今さら優劣を争ってその外側にある諸国に狙われる隙を作るのは愚行だと、この国王は気付いているはずだ。


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