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賢者、王都で面倒に巻き込まれる。
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それは与太ではなく、真実。
そしてそれを行ったのは──
「はぁ……あいつか……」
「何?あんた、知り合い?」
ギロリと眼鏡をかけて大きくなった目で、ミルベルが私を睨む。
「たぶん。やったのが私の知り合いで間違いないと思いますよ……どうしてそうしたのかは、わかりませんが」
「……だとしたら、おかしい」
ミルベルがそう言うと、ミウも私を何か化け物でも見るような目つきになり、わずかずつ椅子をずらして距離を取りながら頷く。
「私がそのご先祖の話を聞いたのは、ずっと小さい子供の頃。そのご先祖は10代以上前……およそ1千年は前」
「いっ……」
ますますミウの顔が青褪める。
「いやいやいやいや!!さすがにそんなに前じゃないですよ!」
「そんなに前?」
どうやって誤魔化そうかと頭を回転させ、『古代語』という単語に辿り着く。
「……私が『賢者』というのは、さっきからミウが呼んでいるからわかりますよね?」
「ああ……そう、だね」
「で、私はこの国の人間ではありません」
「はぁっ?!」
「えぇ──っ?!」
あれ?私はてっきりミウはそのことを知っていたと思っていたのだけれど──
『ローシャル・ダヴィッテ国』と『ローシャル・ルーフェル国』、そして妖精国『シェリエム国』の3国は共通語で成り立っているため、黙っていればどこの出身かはわからない。
少し「あ、あの地方の訛りっぽい……?」という程度で、不自然なほどに言語に偏りがなさすぎるのだ。
西の国出身だというミルベルの先祖がこの地に住み着いた頃ならともかく、千年近くも根付いているのならば、もうこの国の者と言って構わないだろう。
「で……あ、あの……私の先祖はこっちのルーフェル側で……先祖の家を譲られたんで、この国に来たっていう……」
「そ、う言えば……そんなこと、ザイの町で話してましたっけ」
「ええ、思い出してくれましたか」
ミウはずいぶんと引き出しが固いらしく、思い出すまで時間がいろいろ掛かるみたいだと気が付いた。
「で、それも元は『古代語』の研究の一環で。で、その祖父の家にあったその……日記のような本に、あなたのご先祖が会ったと同じだと思われる魔族の話が書かれていて」
「ふぅ~ん………」
ジィッとまだ疑わしくミルベルは私を見るが、これ以上は詳しくは言えない。
それに何代も前の『私』は今の私とは別の肉体であったから、血縁関係はともかく、記憶の中での『先祖』としてもいいだろう。
──と思ったら、モソリと私の腰のあたりで動く気配がし、ようやく私がミウに案内してもらってここまで来たのかを思い出した。
そしてそれを行ったのは──
「はぁ……あいつか……」
「何?あんた、知り合い?」
ギロリと眼鏡をかけて大きくなった目で、ミルベルが私を睨む。
「たぶん。やったのが私の知り合いで間違いないと思いますよ……どうしてそうしたのかは、わかりませんが」
「……だとしたら、おかしい」
ミルベルがそう言うと、ミウも私を何か化け物でも見るような目つきになり、わずかずつ椅子をずらして距離を取りながら頷く。
「私がそのご先祖の話を聞いたのは、ずっと小さい子供の頃。そのご先祖は10代以上前……およそ1千年は前」
「いっ……」
ますますミウの顔が青褪める。
「いやいやいやいや!!さすがにそんなに前じゃないですよ!」
「そんなに前?」
どうやって誤魔化そうかと頭を回転させ、『古代語』という単語に辿り着く。
「……私が『賢者』というのは、さっきからミウが呼んでいるからわかりますよね?」
「ああ……そう、だね」
「で、私はこの国の人間ではありません」
「はぁっ?!」
「えぇ──っ?!」
あれ?私はてっきりミウはそのことを知っていたと思っていたのだけれど──
『ローシャル・ダヴィッテ国』と『ローシャル・ルーフェル国』、そして妖精国『シェリエム国』の3国は共通語で成り立っているため、黙っていればどこの出身かはわからない。
少し「あ、あの地方の訛りっぽい……?」という程度で、不自然なほどに言語に偏りがなさすぎるのだ。
西の国出身だというミルベルの先祖がこの地に住み着いた頃ならともかく、千年近くも根付いているのならば、もうこの国の者と言って構わないだろう。
「で……あ、あの……私の先祖はこっちのルーフェル側で……先祖の家を譲られたんで、この国に来たっていう……」
「そ、う言えば……そんなこと、ザイの町で話してましたっけ」
「ええ、思い出してくれましたか」
ミウはずいぶんと引き出しが固いらしく、思い出すまで時間がいろいろ掛かるみたいだと気が付いた。
「で、それも元は『古代語』の研究の一環で。で、その祖父の家にあったその……日記のような本に、あなたのご先祖が会ったと同じだと思われる魔族の話が書かれていて」
「ふぅ~ん………」
ジィッとまだ疑わしくミルベルは私を見るが、これ以上は詳しくは言えない。
それに何代も前の『私』は今の私とは別の肉体であったから、血縁関係はともかく、記憶の中での『先祖』としてもいいだろう。
──と思ったら、モソリと私の腰のあたりで動く気配がし、ようやく私がミウに案内してもらってここまで来たのかを思い出した。
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