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賢者、王都で面倒に巻き込まれる。
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ちなみに私たちは宿泊している部屋から電撃が来るギリギリ手前に立ってやり取りをしていたのだが、姿を現したのを見て観念したのか、宿屋の主人や直接扉に手を出したらしい4人ほどが気絶し、その他取り巻きの5人ほどがまるで彫像のように固まってこちらを見ていた。
「い、い、い、いつ、おおおおお帰り…に……」
「たった今ですよ。受付の方に聞いたらわかります。というか、彼女がこちらに知らせようとしたので、あなた方が退散する前に戻らせてもらいましたよ?」
私はスタスタと彼らの前に歩みを進め、自室の扉の前に立った。
別に私が今から行う開錠方法を見られても構わない──閉めた後でまた別の解錠条件を先に付与しているので、魔法陣を剥がさない限り、外からの侵入はできないからだ。
だから私は素早く手をドアのあちこちにあて、最後に両手を叩き合わせてドアノブに手をかける。
きっとまた電撃が来るはず──そう思ったらしい侵入未遂犯たちは主人や気絶した仲間を引きずって、部屋の前からかなり後退してくれたため、私は難なくミウとウルを呼び寄せた。
「あ、そうだ」
今私の動きを見ていたはずの彼らに向かって、扉を閉める前に私は情報を与えてやる。
「この扉、今閉めたらまた術が掛かります。夜中や朝方に押し入ろうとしても、私がこちらから開けない限り先ほどと同じ電撃で攻撃されます。ちなみに窓もそのように細工させてもらいましたので、悪しからず」
にっこり愛想よく笑ってみせたのだが、彼らは青褪め、中には腰を抜かしてしまった者もいた。
「ヒッ、ヒィ~~~」
「あっ、悪魔ぁぁぁ───っ!!」
パタンと扉を閉め、開錠条件が変わったのを確認して、私は窓の方に仕掛けた魔法陣を確認するとやはりこちらも開錠か破壊するかして侵入しようとした形跡があり、その衝撃回数がカウントされていた。
こちらは電撃ではなく単純に物理攻撃を防ぐものだったが、おそらく王国一の大砲をもってしても破壊はできなかったはずである。
「……古代魔法術って、かなり頑固なんですねぇ~」
両親や兄妹から『出来損ない』として見捨てられていたとはいえ、やはり魔術に関係する家系ゆえか、ミウには現代の言葉に通じる古代語は何となく読めるらしかった。
僅かひと文字でも間違えたら発動しない魔法陣。
文言ひとつ変えるのも、間違えたら発動しないか大被害を起こすかの二択になってしまう厄介な物。
しかもその『替えていい場所』が名前なのか、発動条件なのか、発動対象なのか、発動する術そのものなのか──それを解き明かさないといけないという面倒さ。
私が考えたものではないため、私自身もそれを研究しつつ使っているのだ。
「だからこそ、もっと簡単に『魔力のある者なら使える術』や、『学べば魔力保持量によって加減が違う術』というのが研究されて受け継がれているんだろうね。古代語は完全に一定以上の魔力と知識と魔術行使経験がないと使えないという条件付きのものが多いから……」
しかもその中でも『行使経験』が一番厄介で、『初級レベルが一番低い魔術を練習で100回使うと次のレベルの魔術が使える』という単純なものから『戦闘で初級・中級を組み合わせた術を3回使う』とか、『生活魔法で詠唱無しで50回使ったら使えるようになる』など偶然も含めて自分で条件を探さないといけない。
しかもその条件を書き留めておく暇もなくだいたいはレベルアップするので、使えるようになった本人以外は知りようがない、または知ってから「あ~、あれがレベルアップ条件だったのか!」と誰かと話し合って初めて知ることも多かった。
「ちょっ……何ですか?!その『他人と共有することを禁じる』みたいな!」
「だから廃れてしまったんだと思うよ?古代語魔術って……」
夜も更けて話し続ける私たちの足元で、ウルはたっぷりと肉と野菜と新鮮な水を腹に詰めて、今夜は襲われる心配もなくぐっすり眠っていた。
「い、い、い、いつ、おおおおお帰り…に……」
「たった今ですよ。受付の方に聞いたらわかります。というか、彼女がこちらに知らせようとしたので、あなた方が退散する前に戻らせてもらいましたよ?」
私はスタスタと彼らの前に歩みを進め、自室の扉の前に立った。
別に私が今から行う開錠方法を見られても構わない──閉めた後でまた別の解錠条件を先に付与しているので、魔法陣を剥がさない限り、外からの侵入はできないからだ。
だから私は素早く手をドアのあちこちにあて、最後に両手を叩き合わせてドアノブに手をかける。
きっとまた電撃が来るはず──そう思ったらしい侵入未遂犯たちは主人や気絶した仲間を引きずって、部屋の前からかなり後退してくれたため、私は難なくミウとウルを呼び寄せた。
「あ、そうだ」
今私の動きを見ていたはずの彼らに向かって、扉を閉める前に私は情報を与えてやる。
「この扉、今閉めたらまた術が掛かります。夜中や朝方に押し入ろうとしても、私がこちらから開けない限り先ほどと同じ電撃で攻撃されます。ちなみに窓もそのように細工させてもらいましたので、悪しからず」
にっこり愛想よく笑ってみせたのだが、彼らは青褪め、中には腰を抜かしてしまった者もいた。
「ヒッ、ヒィ~~~」
「あっ、悪魔ぁぁぁ───っ!!」
パタンと扉を閉め、開錠条件が変わったのを確認して、私は窓の方に仕掛けた魔法陣を確認するとやはりこちらも開錠か破壊するかして侵入しようとした形跡があり、その衝撃回数がカウントされていた。
こちらは電撃ではなく単純に物理攻撃を防ぐものだったが、おそらく王国一の大砲をもってしても破壊はできなかったはずである。
「……古代魔法術って、かなり頑固なんですねぇ~」
両親や兄妹から『出来損ない』として見捨てられていたとはいえ、やはり魔術に関係する家系ゆえか、ミウには現代の言葉に通じる古代語は何となく読めるらしかった。
僅かひと文字でも間違えたら発動しない魔法陣。
文言ひとつ変えるのも、間違えたら発動しないか大被害を起こすかの二択になってしまう厄介な物。
しかもその『替えていい場所』が名前なのか、発動条件なのか、発動対象なのか、発動する術そのものなのか──それを解き明かさないといけないという面倒さ。
私が考えたものではないため、私自身もそれを研究しつつ使っているのだ。
「だからこそ、もっと簡単に『魔力のある者なら使える術』や、『学べば魔力保持量によって加減が違う術』というのが研究されて受け継がれているんだろうね。古代語は完全に一定以上の魔力と知識と魔術行使経験がないと使えないという条件付きのものが多いから……」
しかもその中でも『行使経験』が一番厄介で、『初級レベルが一番低い魔術を練習で100回使うと次のレベルの魔術が使える』という単純なものから『戦闘で初級・中級を組み合わせた術を3回使う』とか、『生活魔法で詠唱無しで50回使ったら使えるようになる』など偶然も含めて自分で条件を探さないといけない。
しかもその条件を書き留めておく暇もなくだいたいはレベルアップするので、使えるようになった本人以外は知りようがない、または知ってから「あ~、あれがレベルアップ条件だったのか!」と誰かと話し合って初めて知ることも多かった。
「ちょっ……何ですか?!その『他人と共有することを禁じる』みたいな!」
「だから廃れてしまったんだと思うよ?古代語魔術って……」
夜も更けて話し続ける私たちの足元で、ウルはたっぷりと肉と野菜と新鮮な水を腹に詰めて、今夜は襲われる心配もなくぐっすり眠っていた。
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