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賢者、寄り道をする。
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ノームたちと共に拘束する魔法陣罠を仕掛け、番となっているドワーフウサギと呼ばれる最小のウサギを何羽か手に入れることができた。
縄を張って後ろから追いかけて転ばす方法しか知らなかったノームたちは、怪我ひとつなく魔法陣の上で硬直するウサギたちを見て驚いたり喜んだりしているが、結界の外に出てモフモフに戻ってしまった彼らは、可愛さから言ったらウサギとほとんど変わらない。
番たちの子供がいないかとウルに探してもらったら、全部で30羽ほどの子ウサギも連れて帰ることができた。
「……こんなにたくさん。命をもらう。大切にする。ありがとう」
ティファムは目を潤ませてまた正座をして頭を下げると、すべてのノームが同じ姿勢を取る。
「いや…喜んでもらえてうれしいけど……全部いっぺんに食べてはダメだよ?」
「食べない!たくさんは食べない。この中でももう子どもの産めないもの。それを選ぶ。子ども、父と母、大事。可愛い。幸せ。感じるのは皆同じ。ならば天に魂を返すものを我らの儀式で清め、その身をいただく。それでいい」
聞けばノームたちは私たち人間と違って、毎日や毎食のように肉を食べるわけではなく、新月と満月にそれぞれその月の誕生日の者を祝う料理のために保存して使うらしい。
「そうか、そうか。それはよかった。牧場も十分広くとれたし……でもウサギ族は繁殖力が強いから、ひょっとしたら少し間引くために子ウサギを屠ったり、逃がしたりする必要があるかもしれないけど……それは大丈夫かい?」
「うむ!その時はきっと精霊王が教えてくれる!時々ロダムスの村を見に来る。だから、ティファムたちは大丈夫」
牧場は念のためミウに対外敵攻撃のために雷魔法をかけてもらっているが、私たちがこの村を離れてひと月もしたら効果が薄れてしまう可能性があるらしい。
その前に精霊王が来てくれることを祈るしかないが、すでに私とミウ、そしてウルの旅立ちの準備はできていた。
ウルは先に祈りを捧げて肉となってくれたウサギを食べさせてもらい、この村に滞在していた10日間の間にノームたちが寄ってたかって洗い上げた毛皮は灰色ではなく真っ白の美しい毛並みとなって、健康体というにはまだ痩せすぎてはいるが元気を取り戻してくれている。
森の境界線まで見送ると言ってくれたが、気配がなくなってしまった小型ウルフ族が本当に消滅か別の場所へ移動したのかはまだわからないため、念のため村の入り口まででよいと断った。
私たちを送ったがために彼らに怪我をしたり命を落とす者が出たとしたら、私もミウも後悔すると思ったからである。
その気持ちはちゃんと汲んでもらえて、代わりに森を出たら割ってくれれば無事に抜けたことを知らせてくれるという木の実をくれたので、お互いに少ししんみりとしながら、でも笑いながら見送り見送られることができた。
縄を張って後ろから追いかけて転ばす方法しか知らなかったノームたちは、怪我ひとつなく魔法陣の上で硬直するウサギたちを見て驚いたり喜んだりしているが、結界の外に出てモフモフに戻ってしまった彼らは、可愛さから言ったらウサギとほとんど変わらない。
番たちの子供がいないかとウルに探してもらったら、全部で30羽ほどの子ウサギも連れて帰ることができた。
「……こんなにたくさん。命をもらう。大切にする。ありがとう」
ティファムは目を潤ませてまた正座をして頭を下げると、すべてのノームが同じ姿勢を取る。
「いや…喜んでもらえてうれしいけど……全部いっぺんに食べてはダメだよ?」
「食べない!たくさんは食べない。この中でももう子どもの産めないもの。それを選ぶ。子ども、父と母、大事。可愛い。幸せ。感じるのは皆同じ。ならば天に魂を返すものを我らの儀式で清め、その身をいただく。それでいい」
聞けばノームたちは私たち人間と違って、毎日や毎食のように肉を食べるわけではなく、新月と満月にそれぞれその月の誕生日の者を祝う料理のために保存して使うらしい。
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「うむ!その時はきっと精霊王が教えてくれる!時々ロダムスの村を見に来る。だから、ティファムたちは大丈夫」
牧場は念のためミウに対外敵攻撃のために雷魔法をかけてもらっているが、私たちがこの村を離れてひと月もしたら効果が薄れてしまう可能性があるらしい。
その前に精霊王が来てくれることを祈るしかないが、すでに私とミウ、そしてウルの旅立ちの準備はできていた。
ウルは先に祈りを捧げて肉となってくれたウサギを食べさせてもらい、この村に滞在していた10日間の間にノームたちが寄ってたかって洗い上げた毛皮は灰色ではなく真っ白の美しい毛並みとなって、健康体というにはまだ痩せすぎてはいるが元気を取り戻してくれている。
森の境界線まで見送ると言ってくれたが、気配がなくなってしまった小型ウルフ族が本当に消滅か別の場所へ移動したのかはまだわからないため、念のため村の入り口まででよいと断った。
私たちを送ったがために彼らに怪我をしたり命を落とす者が出たとしたら、私もミウも後悔すると思ったからである。
その気持ちはちゃんと汲んでもらえて、代わりに森を出たら割ってくれれば無事に抜けたことを知らせてくれるという木の実をくれたので、お互いに少ししんみりとしながら、でも笑いながら見送り見送られることができた。
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