すみません。その魔王は親友なので、勝手に起こさないでもらえます?

行枝ローザ

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賢者、王都に旅立つ。

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ティグリスの『いいアイデア』は当然ながらミウも却下した。
「だいたい!リィ君の恨みだけ晴らしたって、絶対他にも泣かされた子供がいるはずなんですから!そこら辺を全部吐かせてから、ガッツリその子たちの前で落とさないと!『もう二度とこのイヤな男に手を出されることはない!』って知らしめないと!何だったら複数いっぺんにっ!!」

──違った。もっと容赦がないだけだった。

私だけでなく、ティグリスも、おそらく蹴り上げられるような経験がないはずのリアムも、無意識に自分の股間を抑えて前屈みになってしまったが、ミウは鼻息荒く何かを握り潰すようにギュッと拳を握りしめる。
その仕草は、きっとわざとだったに違い。
その証拠にリアムを傷つけ痛めつけた者たちのリーダーであるティグリスの方へニヤリと背筋が凍るような笑みを向けたが、いつもはほんわり可愛らしい少女の目だけ怒りの色を浮かべた笑顔というものがこんなに恐ろしいとは、まったくいい教訓になっただろう。
「ヒィッ……わ、わかった……その件については、自衛団を脱退した者も追尾して居場所は把握している。罪状が分かり次第、先に入っている奴らと仲良く同居してもらう予定だから……」
顔を青褪め、ティグリスはコクコクと頷きながらしっかりと請け負った。


その後のことは私たちの知るところではない。
罪人が増え、それなり・・・・に処罰をされたという便りが届いた時には、私は何度か繰り返した冒険者生活の中でも最高の仲間と共にザイの町を去ったからだ。
少女といえど強弓を引くミウは立派な戦力となり、しかも外見よりも遥かに豪胆で情け容赦もなく、『少女と優男』のふたり連れと侮って襲ってくる野盗紛いの冒険者崩れを屠る。

「ミウひとりでザイまで来れたのも納得するよ……」
「えへへ~。こういう時に囮にされるのは慣れてますから!バカなことを考えたりしでかす男かそうでないかの見分け方も……」
確かに女──しかも若くて可愛い少女であれば見た目から舐められて、若い男より対人関係にはよほど苦労しただろう。
「まあ……冒険者というのは比率でいえばどうしても男社会だし……ミウみたいな可愛い女の子ともなれば、自分の正式なパートナーにしたいと思う者も……」
「正式な……ね。それに当てはまるのは奥さんや婚約者や恋人を、拠点や故郷に置いてきていない人だけですよ!そして職業やリーダー格を嵩にきて『俺様のおかげでお前が守られているんだ!』という態度で恋人面しようとする男はまず却下ですし、それ以前に初対面で私を傷物にする気満々な男は先にこちらからちょん切っちゃいます!」
どうやら『ちょん切り』はもうすでに経験済みらしい。

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