すみません。その魔王は親友なので、勝手に起こさないでもらえます?

行枝ローザ

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賢者、転生する。

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けっきょく私の無害さと有能さが余すところなく伝わったのか、古代語の本は3つの国のあちこちからこの家に運ばれ、次々と翻訳に追われる日々が続いた。
「はぁ~~~……平和だなぁ……」
私はリラと、他にも「古代語を勉強したい」と言って派遣されたあまり似ていない双子の言語学研究者であるローレンスとマーリウスの4人皆で手分けして作業をするようにした。
初めに私に作用したようなヤバい本がまだあったが、うっかりそれを翻訳した他の3人にはまったく影響がなかったので、それらはこっそり私が吸収してそれこそ『無害化』した後に、それぞれの国に写本を作って送り、原本は私の家の地下で預かることで合意してくれたのがありがたい。
私の家の頑丈さをリラが王宮魔術師として保証してくれたのも大きいだろう。
しかもリラだけでなく、双子たちもそれぞれ『師弟の誓い』を行ったため、この家で見聞きしたことは門外不出とできたし、私を『古代語研究第一賢者』、リラを『古代語研究第二賢者』、ローレンスとマーリウスもそれぞれ『古代語研究賢者』として認定された。
「単に『賢者』でよかったのに……」
「そうはいきませんよ、先生」
「そうですよ!ただの『賢者』とナンバーがついた『賢者』様とでは、いろいろと違うんですよ!」
「え?そうなんですか?」
ローレンスとマーリウスに立て続けに言われたが、私の目標は『賢者見習い』から『賢者』になるだけだったので、その先のことなど知ろうともしていなかった。
「そうですよ!冒険者として登録されていても、ランクによって出入りできる国も限定されるし、本来ならこの古代語の本を持って国境を出ることだってできなかったはずなんです!どうやって国境検閲を潜り抜けたのか……」
「……え?攻撃魔法も少し使えたので、国境近くで魔物が出そうな場所で傭兵代わりに雇ってもらって、そのまま一緒に……」
「えぇ~~~っ!!ずーるーいー!!!」
ジタバタと騒ぎ出したのは、可愛らしい少女としか見えないリラである。
「私なんか!もう魔術師歴ウン十年なのに!このっ!この容姿のせいでぇ~~~~~!!!」
さすがに正確な年齢を告白はしなかったが、やはりいろいろと苦労があったらしく、その叫びはまさしく魂からのものだった。
「えっ……リ、リラ様って……私たちよりすごく若く見えるけど、師匠と話が通じてるから22歳ぐらいかと……」
「えっ?!何?その具体的な年齢?!キモッ!!」
「すいません……リラ様……それぐらいの年齢がマーリウスの好みなんです」
ワイワイと楽しく話し合っているけれど、私は思わず呆然としてしまった。
「……あの……ひょ、ひょっとして、この家で一番年下って、私なんじゃ……?」
「エ……」
「あっ……」
「あ~……う~~ん……」
私が何度も転生していることを知っているリラはともかく、ローレンスもマーリウスもそれぞれしまったという顔をした。
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