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ヴィヴィニーアの初恋

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「おまえ!きんぱつがきにいった!ぼくのおよめさんになれ」
「え。いやです」

早すぎる失恋の次は、早すぎる婚約拒否だった。

だって──そっくりだったのだ、リーニャに。
いや、リーニャ以上に綺麗だった。
大神殿長を見上げるその紫紺の瞳は星が宿るように煌めき、流れる金髪は光を纏い、何というか──五歳の頭では表現することもできないくらいのドキドキを感じたのである。
だから誰にも盗られたくない。
渡したくない。

だから───

「えー!!ちちうえ!!!あのおんな!あのおんなをぼくのまえにひれふさせるのです!ぼくのことをしらないといった、あのしつれいなおんな!あいついがいいらないのです!」
父も母も、なぜか必死になって考え直せと説いた。
あの娘は近いうちに聖女として神殿に登殿するとか、修業期間に入るから会えなくなるからとか、妃殿下教育をつけている暇はないからとか、いろいろ理由を述べて、ヴィヴィニーアの妃殿下候補には違う娘を選ばねばならないと──
「ちちうえー!ははうえー!うわぁぁぁぁぁぁ────っ!!!」
最後には幼児ならではの泣き落としで、第二王子ヴィヴィニーア殿下は望むままに婚約者の地位を手に入れた。

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