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ヴィヴィニーアの初恋

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頑張った。
頑張ったのだ、ヴィヴィニーアは。
兄が二歳から始めた『勉強』を始めたのが遅かったのも、兄に及ばない一因になったのだ。
だから──リーニャに選ばれなかっただけなんだ。

「ちちうえ!きょうはしんでんへおでかけですかっ?!」
別に逃げてきたわけじゃない。
交易や数字、歴史だって知らないことを知るのは楽しいからしっかり聞きたいのだが、続けざまに文字ばかりの教科書を見ると、どうしてもまぶたが落ちてしまうだけなのだ。
だから先生がこう言っただけ──
「王子……一度お顔を洗われて、ご気分を整えてから、お勉強を再開しましょう」
そう言われたから、顔を洗い、気分転換に自分の部屋ではなく父上の執務室の方へ散歩に出ただけなのだ。
「ああ、ヴィヴィニーア。今日はもう勉強は終わりか?」
「おやすみのじかんです!」
「おお、そうか。勉強ばかりで机にしがみつき続けるのも辛かろう。父はこれから新たな大聖女候補に会いに行くのだ」
「だいせいじょ……?」
「……うむ。もう歴史では習ったかな?『聖女』とは我が国の各地にある神殿の長ともいえる存在だ。『大聖女』は大王国ダーウィンと八属王国それぞれにある大神殿の長であり、大神殿や神殿で結界を張って害悪から我が領土を守っているのだ」
「けっかい……」
「ハハハ……まだ難しかったか。うむ。辺境にある神殿も強力な結界となるが、それは我が国だけを護るものだ」
「まもる……」
大きな身体をかがめて幼い息子を抱き上げた国王は、そのまま大神殿へ向けて歩を進めながら、『大聖女』がどんなに大切なものかを説き続ける。

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