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ヴィヴィニーアの初恋

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ダーウィネット属王国第二王子ヴィヴィニーア・ラ・クェール・ダーウィネット・ダーウィン。
この長ったらしい名前が、その美しい王子に授けられた洗礼聖名だった。
兄である王太子のクレディネア・ラ・スウェン・ダーウィネット・ダーウィンとは十一歳も離れているが、異母ではなく同母兄弟である。

ヴィヴィニーア王子は、大変わがままに育った。
理由はごく単純──国王夫妻が甘やかしたからである。
元々あまり頑健ではない王妃が第一子出産後に体調を崩し、その後に子を設けるのは難しいと診断されていたのに、奇跡的に第二子の懐妊が叶った。
さすがに第三子は完全に諦めることとなったが、可愛らしいヴィヴィニーアの誕生は国民が祝う以上に、国王一家にとっては大祝事だったのである。

しかしヴィヴィニーア王子はその生誕から一ヶ月経った頃に、高熱を伴う大病を患った。
「万が一のお覚悟を………」
侍医にそう告げられた国王陛下夫妻は、ヴィヴィニーア王子が何とか危機的状態を脱したと診断されるまで、ほとんど不眠で国政と看病に当たった。
当時は大聖女の座が空席で、地方の神殿で勤める聖女が交代で王都を訪れて病状緩和にあたったが、状況は芳しくなかったのである。

王太子ではないとはいえ遅くにできた王子殿下の病床に国王陛下ご夫妻がご心労しておられる──本来ならば噂などしてはいけない王家家庭内の出来事ではあるが、国中に『家族愛に満ち溢れた御代国王陛下と王妃殿下』として知れ渡って語り継がれている。

その熱に浮かされる王子の側にあったのが、誰が贈られたのか──産まれたばかりの真っ白い子犬で、第二王子殿下は三歳の生誕祝いの宴で、その小さきものを『いのちのおんじん』と可愛らしく宣言したという──
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