今日も隠して生きてます。~モフ耳最強なんて、誰が言った?!~

行枝ローザ

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~獣人救出編~

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と思っていたのだが。
「……よく食うな、お前」
「うん!美味い!お前さんが作るもんも美味いが、レビーの作るもんも美味い!!」
「美味いって……てか、レビーって……」
バディアスは遠慮せずに空になった皿を給仕姿で組み立て式の簡易コンロのそばにいるレビウスに向かって差し出し、物言わぬウェイターは優しく微笑みながらおかわりをこれまた遠慮せぬ量で盛りつける。
エルミナを抱っこして離乳食を食べさせるシロンは、相棒のあまりの馴染みっぷりに唸った。
「あ?イイじゃん?レビー。お前もなんかあだ名で呼んでやろっか?ん~……シー?ロー?」
「やめてくれ!」
ゾッとして顔色を青褪めさせながらシロンが否定すると、バディアスがキョトンと首を傾げる。
「ん?偽名ってほどじゃないけど……あだ名とか、幼名とかそういうので普通呼ばないか?」
「いや……一族ではそういうことは……少なくとも父さんは『名前を歪めることは存在を歪めることだ』と祖父や曽祖父から教えられた…と……」
「存在を歪める……?」
「ああ。だからディーファン一族は名前を省略しない。何故と聞かれても答えようがないから、予め『聞くな』としか言えないが。他にもいろいろと『世間一般』と言われているものとは違う決まりが多々あるが……お前は別に順守する必要は」
「あっ、ないの?んじゃあ、やっぱりレビウスはレビでいーんじゃん!」
「いいってわけじゃ……はぁ……何かお前は言っても聞かなさそうだな……」
「ハッハッハーッ!そういうことだ!まあ人前でレビーの名前は出さないからさっ!」
「いや、そういう問題では……どちらにしろ、元の名前から変えてしまったからな……元の飼い主がよほど執着していなければ見つけることもできないから、どっちでもいいと言えばいいんだが……」
「そういうもんなの?」
「そういうもんだ。お前も誰にも見つけられたくなくなったら俺に言えばいい。ただしかっこいい名前を付けてもらえるとか期待はするなよ?」
「え……えぇ~~………」
いまいちディーファン一族のルールというものが理解できないバディアスは、予めシロンが釘を刺したというのにやはり質問を重ねようとしてくるが、先回りしてシロンはこれ以上話すつもりはないことを言外に滲ませた。

そうしてお互いに仲良くなったのかそうではないのか、よくわからない距離感でディーファン一族の集落を出て初めての夜は更けていった。


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