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~獣人救出編~
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シロンの計画ではレビウスを連れて『あの森』へ戻るつもりだった。
そこからレビウスの記憶を元に森へ置き去りにしたレビウスの元主人から──間違いなく遺品しかないだろうが──レビウスのいた町を探し出し、次いで彼の母親を救い出そうと考えていたのである。
レビウスどころか隷属させていた貴族の息子とやらも消えてしまったあの時点でワーウルフの母親を活かしておくメリットがあるかと言われれば思いつかないが、めったにない子持ち──正確に言えば胎児を抱えた獣人というのは稀少の極みであり、それが一種のステータスにもなりうるかもしれない。
そのためにも息子が死んだということはあえて告げずに、生きていると思わせて隷属させているだろう。
だいたい人間用であろうと獣人用であろうと自殺防止の術が隷属道具には施されているはずだし、人間族よりもずっと寿命の長い獣人は長くその肉体的若さを保つため、レビウスによく似た母ならばいまだに性的搾取を免れていない可能性も高い。
獣人娼館などでは親子二代で同じ雌の獣人に通う者もいるし、使い捨ての道具と言いながら冒険者たちのために長く戦闘力になっている雄の獣人奴隷もいないわけではなかったから、今も変わらずレビウスの母がそこにいる可能性に賭けるしかないという現実もあった。
むろんそのまま素直にレビウスを連れ回すつもりはなく、レビウスにはおそらく近くにあるはずのディーヴァント一族の家に隠れてもらい、母親の居場所の検討をつけてからこっそり夜中にでも忍び込んで再会の機会を作るつもりである。
レビウスを連れていた貴族崩れの冒険者の話では生まれたばかりの獣人の赤ん坊を研究機関に引き渡したと言っていたが、その母親をどこかに売ったとは言っていない。
だいたい貴族の家で慰み物になっているのならば、その家の者たちの性癖や暴かれては困る秘密などを目にしたり聞いたりしている可能性があるのだ。
たとえ言葉が通じなくとも文字の形を理解し、筆記ができるほどの知識を得る獣人がいることも今では一部の人間の間では常識となっており、情報収集に長けている貴族家の者であればそう簡単に家に入れてしまった獣人を手放すことはないはず──
「なるほど」
「じゃあそういうわけで……」
「ミナはレビウスに見てもらって、俺とお前で奪還作戦を練る…と」
「いや待て」
この作戦前に扶養家族と護衛が増えてしまったのは計算外だったが、レビウスの母親を探すことに関しては自分ひとりで動くつもりだったシロンは、納得した顔で頷くバディアスを押しとどめた。
「行くのは俺ひとりだ。何でお前まで……」
「何だと?これを見よ!」
そこからレビウスの記憶を元に森へ置き去りにしたレビウスの元主人から──間違いなく遺品しかないだろうが──レビウスのいた町を探し出し、次いで彼の母親を救い出そうと考えていたのである。
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そのためにも息子が死んだということはあえて告げずに、生きていると思わせて隷属させているだろう。
だいたい人間用であろうと獣人用であろうと自殺防止の術が隷属道具には施されているはずだし、人間族よりもずっと寿命の長い獣人は長くその肉体的若さを保つため、レビウスによく似た母ならばいまだに性的搾取を免れていない可能性も高い。
獣人娼館などでは親子二代で同じ雌の獣人に通う者もいるし、使い捨ての道具と言いながら冒険者たちのために長く戦闘力になっている雄の獣人奴隷もいないわけではなかったから、今も変わらずレビウスの母がそこにいる可能性に賭けるしかないという現実もあった。
むろんそのまま素直にレビウスを連れ回すつもりはなく、レビウスにはおそらく近くにあるはずのディーヴァント一族の家に隠れてもらい、母親の居場所の検討をつけてからこっそり夜中にでも忍び込んで再会の機会を作るつもりである。
レビウスを連れていた貴族崩れの冒険者の話では生まれたばかりの獣人の赤ん坊を研究機関に引き渡したと言っていたが、その母親をどこかに売ったとは言っていない。
だいたい貴族の家で慰み物になっているのならば、その家の者たちの性癖や暴かれては困る秘密などを目にしたり聞いたりしている可能性があるのだ。
たとえ言葉が通じなくとも文字の形を理解し、筆記ができるほどの知識を得る獣人がいることも今では一部の人間の間では常識となっており、情報収集に長けている貴族家の者であればそう簡単に家に入れてしまった獣人を手放すことはないはず──
「なるほど」
「じゃあそういうわけで……」
「ミナはレビウスに見てもらって、俺とお前で奪還作戦を練る…と」
「いや待て」
この作戦前に扶養家族と護衛が増えてしまったのは計算外だったが、レビウスの母親を探すことに関しては自分ひとりで動くつもりだったシロンは、納得した顔で頷くバディアスを押しとどめた。
「行くのは俺ひとりだ。何でお前まで……」
「何だと?これを見よ!」
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