今日も隠して生きてます。~モフ耳最強なんて、誰が言った?!~

行枝ローザ

文字の大きさ
上 下
92 / 109
~街道移動編~

13

しおりを挟む
自分の知らない人が増える──自分を知る者が先に逝く。

どちらが怖いだろうか?

そう自問したところで、バディアスの答えは決まっている。
「若さとかは別に必要ないけどさぁ……別に『次の家』までじゃなくていいぜ?エルミナを置いていくんだろう?そん時にひとりっきりじゃあ、旅もつまんねぇだろう?」
「バ……」
「いいぜ?別に世の果てまで付き合う。俺とお前を繋ぐ契約呪術を解くためじゃねぇ。てか、解かなくていい。どうせ母親以外に心残りなんか無いし、その母親すら『好きにおし』って感じだからな」
故郷に未練はないし、戻ったところで利用どころか逆に命を狙われる始末だ。
それならこのままシロンと共に一族の謎と生き残りを探す旅──望むところだ。
「だいたい俺って『冒険者』ライセンス持ってたって、やってることはほぼ諜報活動だぜ?戻ったら戻ったで、毒入りの何かで死んでないことを忌々しく思う兄姉たちに別に舌打ちされて王子様らしい扱いされるわけでなく、またどっかへやられて毒入りの何かを受け取って……どっちが長生きできそうか?って言えば、お前に付いてた方が生き延びる確率が高いだろう?」
「なるほどな……」
そういう考え方もあるか、とシロンは笑った。
少なくともディーヴァント一族の依頼を受ける者へのボーナス的な恩恵として、疲れがすぐ取れるとか怪我をしても驚くほど回復が早いだとかいった薬効を混ぜた食事を振る舞って同行の負担を軽減するようにしているが、それらもバディアスのような護衛担当としては『長生きできる要因』に当たるのかもしれない。
それにバディアスには契約にかこつけて、普通の護衛依頼の冒険者には明かさないディーヴァント一族の隠れ家まで使ってもらっているのだから、これから先も一緒に旅をする仲間と考えた方がいいようだ。
「その方が後から『忘却の薬』を飲ませる手間も省けるなぁ……」
「え?何?俺、この度が終わったら記憶消されて始末される予定だったの?」
「始末はしないが……まあ当り障りのない記憶に塗り替えることにはなったかもな。一緒に旅をしたのは普通の商人、魔素毒の森を避けた、赤ん坊はいない、危険なことはほとんどなかった……ぐらいに。ついでに俺の顔も忘れてもらって、次に会った時もまた『はじめまして』から始まるんだ」
「……『流浪のディー』が歴史に残らないわけが、わかった気がするよ」
物悲しそうにバディアスが、当たり前のような顔をして人の記憶を操作すると言ってのけるシロンを見つめる。
「お前さんたちはそうやって自分たちの一族や役目を隠し、『他人』と積極的に関わらないようにして、『秘密』を守ってきたんだな……魔素毒を利用できるだけ、利用して」
「……ま、あ……そうとも言えなくはない……かな?だが今以上に魔素毒の森の謎は、ディーヴァント一族でも把握していない。どうやってできたのかとか、なぜそこに魔素毒が吹き溜まって魔物が発生するのか……とかな」
実際研究した者もいるかもしれないし、どこかの家にそれが隠されているかもしれない。
だがシロンはそれを探したことも、探そうと思ったこともなかった──が、バディアスの言葉で『管理』するだけでない旅の目的を、シロンは見つけた気がした。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

魔女は言う。「復讐したい? なら新兵器の実験台になってくれないかしら?」と……  【鎧殻剣記】

熱燗徳利
ファンタジー
「復讐を胸に、装甲と剣で戦い抜く」 「新兵器の実験台になってくれないかしら?」 同学年の魔女は平気な顔でそんなことを言う。 神聖ヴァルスレン帝国内では、魔術師が原因と思われる不審な事件が多発していた。 そんな中、セリオス大学に通う主人公アルベクの前に、自ら魔女を名乗る少女が現れる。彼女はアルベクに新兵器の実験台になってくれるよう頼みこんできて…… 新兵器の力により、特殊な鎧を纏った「鎧殻装兵」として、恐ろしい陰謀に立ち向かいつつ、自身の復讐の相手を探していくダークファンタジー

処理中です...