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~街道移動編~
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それを言ってしまえばバディアスも同じような状態にあるのだが、彼は男だし、どちらかといえば『家族』と距離を取りたがっている節がある。
しかも今はシロンとの『契約』により、今聞いたことを話せないのだから男女の結びつきよりももっと気持ちは軽かった。
「……いや、あのさぁ……ひょっとして……俺も……?」
「………う、あ……ああ。すまん。短期間なら影響はないんだが……たぶん、今のお前だとだいたい他の人間より一~二ヶ月ぐらい寿命が延びてる……というか、成長が止まるというか……」
恐怖を湛えたバディアスは鋭く察したが、シロンの答えを聞いて逆に脱力する。
「いち…にかげつ……」
「う……一緒にいるのもそんなに長いことではないと……エルミナを連れてレビウス……獣人がいる家に行くまでの間の護衛のつもりだったからな……せいぜい成長が遅くなるのも二年ぐらいだろう。それから後なら普通に歳を取っていくが……いや、それも気味が悪いよな……つい自分たち一族の習いのまま、同じ物を食べてもらっていたが……やはりこれからは別々にした方が……」
「……それなら、今後俺がずっと一緒にいるなら、お前たちと同じだけのその……時間を生きるってことか?」
その言葉にシロンは素直には頷けない。
何せ──父と添い遂げるはずの母は元々病弱だったということもあり、ディーヴァント一族の秘薬でも救うことが叶わず、若くして死んでしまったのである。
そんな母を失った喪失感からか父も病に倒れ、おそらく一族の中ではかなり若い部類でやはり亡くなり、一族以外の者がどれくらい長寿を保てるのかを知る術は今のシロンには無い。
「……少なくとも母はずっと若いままだった……としか。それを知るために旅に出ようとは思っているが……その際にはあの古代語の契約は破棄しようと思っているし」
「え?破棄……できるもん、なのか?」
「たぶん」
父からの又聞きだから確かではないが、この国の端──隣国の国境にある魔素毒の森の近くの村で、古代語を研究している教会があるはずで、そこでシロンとバディアスを繋いでいる契約も破棄できるはずである。
だがそれを聞いたバディアスは何となく残念というか、あまり好ましくなさげな表情を浮かべた。
しかも今はシロンとの『契約』により、今聞いたことを話せないのだから男女の結びつきよりももっと気持ちは軽かった。
「……いや、あのさぁ……ひょっとして……俺も……?」
「………う、あ……ああ。すまん。短期間なら影響はないんだが……たぶん、今のお前だとだいたい他の人間より一~二ヶ月ぐらい寿命が延びてる……というか、成長が止まるというか……」
恐怖を湛えたバディアスは鋭く察したが、シロンの答えを聞いて逆に脱力する。
「いち…にかげつ……」
「う……一緒にいるのもそんなに長いことではないと……エルミナを連れてレビウス……獣人がいる家に行くまでの間の護衛のつもりだったからな……せいぜい成長が遅くなるのも二年ぐらいだろう。それから後なら普通に歳を取っていくが……いや、それも気味が悪いよな……つい自分たち一族の習いのまま、同じ物を食べてもらっていたが……やはりこれからは別々にした方が……」
「……それなら、今後俺がずっと一緒にいるなら、お前たちと同じだけのその……時間を生きるってことか?」
その言葉にシロンは素直には頷けない。
何せ──父と添い遂げるはずの母は元々病弱だったということもあり、ディーヴァント一族の秘薬でも救うことが叶わず、若くして死んでしまったのである。
そんな母を失った喪失感からか父も病に倒れ、おそらく一族の中ではかなり若い部類でやはり亡くなり、一族以外の者がどれくらい長寿を保てるのかを知る術は今のシロンには無い。
「……少なくとも母はずっと若いままだった……としか。それを知るために旅に出ようとは思っているが……その際にはあの古代語の契約は破棄しようと思っているし」
「え?破棄……できるもん、なのか?」
「たぶん」
父からの又聞きだから確かではないが、この国の端──隣国の国境にある魔素毒の森の近くの村で、古代語を研究している教会があるはずで、そこでシロンとバディアスを繋いでいる契約も破棄できるはずである。
だがそれを聞いたバディアスは何となく残念というか、あまり好ましくなさげな表情を浮かべた。
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