70 / 109
~隠里中継編~
9
しおりを挟む
家に到着すると、とりあえず荷馬車に積んだ物を運び込むようにとシロンに言われたバディアスは、素直に子供用のベッドマットレスやら大人用の寝具などを運び込んだ。
その間に裏口の方に回ったシロンは、バディアスに教えるつもりがない通用口とは別のドアを開ける。
中は大人一人も立てないような狭い物置だったが、その床には村にあった箱と対になるものが置いてあった。
「えぇと……まあ、酒は全部入れておくか。お菓子……?赤ん坊用の物もあるが……まだ食べられないと思うが……うん?珍味?珍しいな、生の肉もあったのか。ちょうど狩猟の時期だったか……いい時に寄れたな」
独り言を言いながらシロンはまだ箱の中の物を取り出し、物置の棚に日用品の予備を置き、家の中に運び込む物と荷馬車に乗せる物とを分ける。
「こんなところか。それと……」
棚にあったのは今買ってきたものばかりでなく、魔素毒の森で採取したものを入れるための特別な箱や袋、樽などだ。
その中から袋をいくつか選び、広場に造られた共同の水浴び場へと運んで洗うために、手押しの荷車に乗せる。
陽はまだ高く、遅い昼食を食べた後でも洗浄には間に合うだろう──今回は採取でも最上級の品を収めるわけではないので、そんなに気を使わなくていい。
「あ~、とにかく腹減ったわ~……って。何?今から森に行くのか?」
何かを期待するような目でバディアスが顔を覗かせたが、まずは食事である。
さっきの村では冒険者ギルド以外は立ち寄らないこととして必要最低限の用事しか済ませず、バディアスにいろいろと買い物をしてもらいつつ村の情報を仕入れてもらった。
その報告ももらいたいし、暗くなる前に魔素毒の森の被害状況と村に必要な薬草の見当をつけておきたい。
「ガラン?堕胎薬の?」
いくら『時間を止める』ということがかのうなマジックボックスに入っていたとしても、村で買った新鮮な野菜は何となく瑞々しさが違う気がする。
そう思いながら勢いよく野菜サラダを口に放り込みながら、バディアスが確認するように訊ねた。
「まぁ……そういう使い方もされるけど、本来は下剤なんだよ」
「えっ?!」
使うのはガランの若い葉だ。
花が終わった頃に摘み取りそれを煎じて飲むと緩やかに催す薬となるが、大きく育ってしまった葉は毒が多く含まれ過ぎて、娼館や一部の闇医者が取り扱う堕胎薬として流通している。
シロンとしてはそんな物を取り扱いたくはないのだが、正しく処理しないと堕胎どころか母体の命まで奪いかねない劇薬であるため、その採取や保存方法を知られないためにもディーヴァント一族が管理せざるを得ない。
「そんなわけで誰かが金儲けしようとしてるんだが……着眼点は悪くないんだが、ディーヴァント一族の者でないという時点で破綻してる悪事なんだ」
「んで、悪者退治?」
「そうならないために、先回りして『金の素』をある程度刈り取っておく。変なことに自分の生命維持に危険なほど採取されると、それ以上は何があっても一枚も葉が取れなくなるんだ」
「はぁ~……」
よくわかったようなわからないような声でバディアスは返事をした。
その間に裏口の方に回ったシロンは、バディアスに教えるつもりがない通用口とは別のドアを開ける。
中は大人一人も立てないような狭い物置だったが、その床には村にあった箱と対になるものが置いてあった。
「えぇと……まあ、酒は全部入れておくか。お菓子……?赤ん坊用の物もあるが……まだ食べられないと思うが……うん?珍味?珍しいな、生の肉もあったのか。ちょうど狩猟の時期だったか……いい時に寄れたな」
独り言を言いながらシロンはまだ箱の中の物を取り出し、物置の棚に日用品の予備を置き、家の中に運び込む物と荷馬車に乗せる物とを分ける。
「こんなところか。それと……」
棚にあったのは今買ってきたものばかりでなく、魔素毒の森で採取したものを入れるための特別な箱や袋、樽などだ。
その中から袋をいくつか選び、広場に造られた共同の水浴び場へと運んで洗うために、手押しの荷車に乗せる。
陽はまだ高く、遅い昼食を食べた後でも洗浄には間に合うだろう──今回は採取でも最上級の品を収めるわけではないので、そんなに気を使わなくていい。
「あ~、とにかく腹減ったわ~……って。何?今から森に行くのか?」
何かを期待するような目でバディアスが顔を覗かせたが、まずは食事である。
さっきの村では冒険者ギルド以外は立ち寄らないこととして必要最低限の用事しか済ませず、バディアスにいろいろと買い物をしてもらいつつ村の情報を仕入れてもらった。
その報告ももらいたいし、暗くなる前に魔素毒の森の被害状況と村に必要な薬草の見当をつけておきたい。
「ガラン?堕胎薬の?」
いくら『時間を止める』ということがかのうなマジックボックスに入っていたとしても、村で買った新鮮な野菜は何となく瑞々しさが違う気がする。
そう思いながら勢いよく野菜サラダを口に放り込みながら、バディアスが確認するように訊ねた。
「まぁ……そういう使い方もされるけど、本来は下剤なんだよ」
「えっ?!」
使うのはガランの若い葉だ。
花が終わった頃に摘み取りそれを煎じて飲むと緩やかに催す薬となるが、大きく育ってしまった葉は毒が多く含まれ過ぎて、娼館や一部の闇医者が取り扱う堕胎薬として流通している。
シロンとしてはそんな物を取り扱いたくはないのだが、正しく処理しないと堕胎どころか母体の命まで奪いかねない劇薬であるため、その採取や保存方法を知られないためにもディーヴァント一族が管理せざるを得ない。
「そんなわけで誰かが金儲けしようとしてるんだが……着眼点は悪くないんだが、ディーヴァント一族の者でないという時点で破綻してる悪事なんだ」
「んで、悪者退治?」
「そうならないために、先回りして『金の素』をある程度刈り取っておく。変なことに自分の生命維持に危険なほど採取されると、それ以上は何があっても一枚も葉が取れなくなるんだ」
「はぁ~……」
よくわかったようなわからないような声でバディアスは返事をした。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる