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~育児旅偏~
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朝食は煙や匂いで誰かに知られてはいけないと思い、あらかじめサンドイッチを用意していた。
「へぇ~……シャレたもん、作れるんだなぁ」
「手の込んだものじゃない。パンと野菜と干し肉と…なければ、ジャムでも塗ればいい」
「じゃむ?」
「あー……果物を砂糖とリモの汁で煮た物だ」
「リモって、死ぬほど酸っぱい果物……だっけか?俺の故郷では干し果物が一般的で、リモみたいなのも砂糖漬けにしたのを女が食ってるけど……俺も食わされたことあるけど、なんか苦くてすっぱくて嫌いだったな~」
確かに果物は酸味の強い物や固い物が多いため、この国でもあまり好まれていなかったが、交易が発展してずいぶん遠くの国から『ジャム』が伝わった。
最初は作られた物が出回っていたが、珍しい材料がないかと輸入品と共にやってきた料理人が喜ぶほど、放置されていた多種の野生果物は砂糖や蜂蜜と共に煮込んで消費されるようになり、ついでにそれらを使った菓子などが現在この国の名産となっている。
「ああ!あの何かにちゃっとしたやつか!やたらと甘くて、酒には合わなかったんだよなぁ……」
「飲む物を選べよ……茶なんかと合わせるとけっこう美味いんだぞ?」
「うぇぇ……俺の育った所じゃあ、砂糖は変な味がしてなぁ……蜂蜜は貴族様の物だったし、薄い樹液じゃ満足できねぇしで……まあ、母親が俺を産んでくれたおかげで少しだけ回ってくるようになったんだけど、そんなイイモンは病人にやるぐらいだったし」
「蜂蜜は栄養があるからな……ふぅん……魔素毒の森にも蜜の取れる場所があるが、溜まった毒を抜いた物を収めるのはやっぱり王族や貴族ばかりだな」
ポロリと零したシロンの言葉にバディアスは微かに嫌悪の色を滲ませる。
甘味に関して興味はなさそうだが、高級品や珍味を独占しているということに納得できないというところなのだろう。
「まあ…甘い物が嫌いなら、別に無理して食うことはないさ。あっ、全部食うなよ?この村の近くにある森はかなり毒が薄いから、魔物が出づらいんだ」
「つまり、食料として魔物を狩るのはあんまり考えるなよ…ってこと?」
「その通り」
エルミナを保護する前は手入れをしなければと考えていたが、何故かエルミナの周りが整地したように草一本もなかったため、あの規模を考えれば十ヶ月ほど放置したがたいして毒が溜まりそうには思えない。
とにかくその状態を確認してから次の目的地に発つつもりで、シロンは家中の封印と火の元の確認をし、迷い人のために条件付き開放を施した家以外はまやかしの封をした。
「へぇ~……シャレたもん、作れるんだなぁ」
「手の込んだものじゃない。パンと野菜と干し肉と…なければ、ジャムでも塗ればいい」
「じゃむ?」
「あー……果物を砂糖とリモの汁で煮た物だ」
「リモって、死ぬほど酸っぱい果物……だっけか?俺の故郷では干し果物が一般的で、リモみたいなのも砂糖漬けにしたのを女が食ってるけど……俺も食わされたことあるけど、なんか苦くてすっぱくて嫌いだったな~」
確かに果物は酸味の強い物や固い物が多いため、この国でもあまり好まれていなかったが、交易が発展してずいぶん遠くの国から『ジャム』が伝わった。
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「ああ!あの何かにちゃっとしたやつか!やたらと甘くて、酒には合わなかったんだよなぁ……」
「飲む物を選べよ……茶なんかと合わせるとけっこう美味いんだぞ?」
「うぇぇ……俺の育った所じゃあ、砂糖は変な味がしてなぁ……蜂蜜は貴族様の物だったし、薄い樹液じゃ満足できねぇしで……まあ、母親が俺を産んでくれたおかげで少しだけ回ってくるようになったんだけど、そんなイイモンは病人にやるぐらいだったし」
「蜂蜜は栄養があるからな……ふぅん……魔素毒の森にも蜜の取れる場所があるが、溜まった毒を抜いた物を収めるのはやっぱり王族や貴族ばかりだな」
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甘味に関して興味はなさそうだが、高級品や珍味を独占しているということに納得できないというところなのだろう。
「まあ…甘い物が嫌いなら、別に無理して食うことはないさ。あっ、全部食うなよ?この村の近くにある森はかなり毒が薄いから、魔物が出づらいんだ」
「つまり、食料として魔物を狩るのはあんまり考えるなよ…ってこと?」
「その通り」
エルミナを保護する前は手入れをしなければと考えていたが、何故かエルミナの周りが整地したように草一本もなかったため、あの規模を考えれば十ヶ月ほど放置したがたいして毒が溜まりそうには思えない。
とにかくその状態を確認してから次の目的地に発つつもりで、シロンは家中の封印と火の元の確認をし、迷い人のために条件付き開放を施した家以外はまやかしの封をした。
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