今日も隠して生きてます。~モフ耳最強なんて、誰が言った?!~

行枝ローザ

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~育児旅偏~

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ありがたいことに、エルミナはこんな騒ぎの中でも大人しく眠ってくれている。
確かに早朝に出る予定ではあったが、ほぼ一斉に食事をする時間に動いた方が、荷馬車の音も聞こえづらいかもしれなかった。
「札と草輪の効果も確認できたし……まあいいか……」
「本当に『視えないだけ』なんだな……」
バディアスが子供たちの消えた方角を見ながらぽつりと漏らす。
「ああ。ほぼ人間族限定の対処法でしかないがな。ディーヴァントの人間も、おそらく俺以外はいないはずだから……あちこちの隠れ里が見つかってしまうかもなぁ……」
もっともシロンが先人たちとは比べものにならない短い年月で辿れたのは、父の周ってきた地区のほんの一部のはずだ。
主たちのいなくなった家々はどうなっているだろうか──
「え?何?聞いてないんだけど?ディーの一族って、隠れ住んでたの?」
「隠れるというか……うん、そう・・・だな……そうなるのか?うん……」
言葉に詰まるシロンたちの生活はある意味特殊だった。

様々な場所に散らばり、また集まり、流浪を繰り返すうち、国によって発展の具合に差があることがわかってきたのである。
ある国では『魔法』や『魔術』といったものが廃れてお伽噺のようになってしまい、薬学が人体を治す国。
ある国では『科学』というものがとてつもなく発展し、鉄や銅などの金属が重要視され、自然にある雷や太陽の光などで生活が回っている国。
バディアスの故郷のように古代文字がまだ便利に使われている国。
シロンたちが今いる国のように王侯貴族がすべてをコントロールし、魔術と薬学に差をつけてなるべく知識を隠匿しようとする国。
いろいろな国の風習や発展具合をうまく取り入れて、便利に生きている国。
どの国にも長所があれば、短所もある。
魔素毒の森を管理するために各地を放浪する一族の者たちは、その中でも『長所』を持ち帰ることができ、おかげでシロンがレビウスを住まわせている家は、ここよりもかなり便利だ。
水は井戸を掘らず、どこかの川まで行って汲み上げる必要はない。
火を起こすのに火打石を使ったり魔力を使うこともなく、しかも調整が可能な調理台もある。
家中の灯りは簡単に明るくしたり暗くしたりすることができた。

バディアスが見たら、きっと驚くだろう──

ふとそんなことを考えて、シロンは『客人』を招くことが初めてだったと気付いて少しにやけた。

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