今日も隠して生きてます。~モフ耳最強なんて、誰が言った?!~

行枝ローザ

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~育児旅偏~

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子供たちが皆家から離れると、シロンとバディアスは長く息を吐いた。
シロンに動かないようにと言われて思わず気配を消すために息を詰め、そんなバディアスの様子につられてシロン自身も息を止めてしまったせいである。
「っは~~~~~~……すごいな……これ、のおかげだよな?」
少し乱暴に扱ったら切れてしまいそうな草で編んだ腕輪を何度も眺め、バディアスは眉を顰める。
どこかでこんなものを見た覚えが──
「あっ!土産物屋だっ!」
思わず大声を出してしまい、シロンに口を塞がれてしまった。
一応『あるのに気付かない』という惑いの呪符と忘却の草で編んだリースや腕輪はあるものの、実際には存在しているわけで、シロンが慌ててバディアスを押さえ込んだのは正解で、さっきの子供たちが今度は人数が倍以上になって戻ってきたのである。
「……っおい!やっぱりこっちから声がしたぞ!」
「ダメだよぉ……にいちゃぁん……」
「声ったって……何もないじゃん!」
わぁわぁと騒ぎながらも、まるで結界でもあるかのように子供たちはピタリと同じ位置で立ち止まって、それ以上は近付いてこない。
ただ勘の鋭い者がいるのか、ふたりばかりはこちらの方へ顔を向けていて、バディアスとしっかり目が合ってしまい、思わず冷や汗が流れる。
「……大丈夫だ。あの子たちには俺たちは見えていないし、記憶にも残らない。どんなふうにこの家が見えているかはわからないが、少なくとも『家がある』という認識は、いまはない」
囁きよりも小さい、ひょっとしたら空気の揺れだけで伝えているのではないかと思えるぐらいの極小の声量でそう伝えてくるシロンに向かい、バディアスはなるべく衣擦れの音すら立てないようにとゆっくりとひとつだけ頭を動かした。
「ほらぁ。やっぱりなんもないって!」
「ねぇ…にいちゃぁん…かえろーよぉ……」
何か不気味な気配を感じたのか、シロンやバディアスではなく、庭の隅に建てられた便所小屋の方に顔を向けた年少組がグイグイとファーロたち年上の子供の腕を引っ張り、何とかこの『気味悪い場所』から離れようと必死になる。
最後までファーロが見当違いの場所を眺め、頭を傾げながらようやくシロンの家から離れてはくれたが、シロンもバディアスもしばらくは動けなかった。

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