今日も隠して生きてます。~モフ耳最強なんて、誰が言った?!~

行枝ローザ

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~旅立ち編~

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「ほ…ほあっ?!」
何を驚くことがある?
シロンは不思議に思った。
契約系の秘儀はどんなものでも発光はするはずだし、『契約の儀』を行ったのならば、バディアスはその光を見ているはずなのだが──
「はぁぁ……こんな綺麗な……前の時にはなぜか目隠しさせられてたんだよなぁ……王族として認められない俺みたいな『穢れ者』には見せられんとか言われて……」
「穢れ者って……つまらんことを言う奴らがいるんだな、お前の国には」
呆れた顔のシロンに向かって、バディアスはさらに呆れた顔で返す。
「だろ?そんなんが半分とはいえ血の繋がった異母きょうだいなんてゾッとするぜ。あ、後は儀式を執り行った司祭だとか諜報部の奴らだとか……まぁ、軒並みロクなもんじゃないのさ、ふっるーい形式ばったお貴族様たちはさ」
「ふぅん……おそらく、その古代語による呪術を秘したい者たちが『権力者たち』ってことなんだろうな」
「そうだな……本当に難しいものは確かに貴族や王族しか知ることはないらしい。俺たち庶民には簡単な生活に関わる古代魔法語が教えられる」
ところ変われば何とやらだな──シロンは魔術のほとんどが王侯貴族によって制御され秘されている自国との違いを考えた。
たとえ簡単なものでも口頭で魔術を使えれば庶民が呪文を刻んだ魔石を買ったりしなくてすむのだが、ファーラガントの王侯貴族には、国民たちの生活を楽にしてやろうという気持ちは無いのかもしれない。
「それでも生活の中だけとはいえ、魔術を自分たちのために使えるのは羨ましいさ……この国では現代魔術語だって使えるのは教会に仕える者だけだし、生活魔法については魔石を王家管轄の商会から購入して魔力を込めて始動するしかないからな」
「え?でも、お前は?」
バディアスはキョトンとする。

名前の知らない薬草を混ぜ込んだ洗浄液。
不法侵入者を許さない『見えない壁』を張り巡らせた家。
見たこともない薬酒。
挙句の果てが、ラウナ王国の支配階級しか知らない古代魔術の解除と再契約。

『流浪のディー』は、バディアスが知るよりもはるかに知られていないことが多い一族らしいと見当がついた。
「……了解した。アンタの秘密は、その赤ん坊が種類不明の獣人であること。そしてアンタ自身が『流浪のディー』であるが、その一族に関する話すべて……ってことだな」
「ああ。で、そちらの秘密はお前がラウナ王国前国王の末子であること、その中でもとびきりお前のことを気に入らない姉姫が『達成不可能な伝説級の秘宝を手に入れろ』というムチャぶりで、どことも知れない地の果てで行き倒れることを願われてるってことか」
「あっ……あぁ……それはそうなんだが……まとめられると、案外ヘコむ……」
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