41 / 109
~旅立ち編~
3
しおりを挟む
「ほ…ほあっ?!」
何を驚くことがある?
シロンは不思議に思った。
契約系の秘儀はどんなものでも発光はするはずだし、『契約の儀』を行ったのならば、バディアスはその光を見ているはずなのだが──
「はぁぁ……こんな綺麗な……前の時にはなぜか目隠しさせられてたんだよなぁ……王族として認められない俺みたいな『穢れ者』には見せられんとか言われて……」
「穢れ者って……つまらんことを言う奴らがいるんだな、お前の国には」
呆れた顔のシロンに向かって、バディアスはさらに呆れた顔で返す。
「だろ?そんなんが半分とはいえ血の繋がった異母きょうだいなんてゾッとするぜ。あ、後は儀式を執り行った司祭だとか諜報部の奴らだとか……まぁ、軒並みロクなもんじゃないのさ、ふっるーい形式ばったお貴族様たちはさ」
「ふぅん……おそらく、その古代語による呪術を秘したい者たちが『権力者たち』ってことなんだろうな」
「そうだな……本当に難しいものは確かに貴族や王族しか知ることはないらしい。俺たち庶民には簡単な生活に関わる古代魔法語が教えられる」
処変われば何とやらだな──シロンは魔術のほとんどが王侯貴族によって制御され秘されている自国との違いを考えた。
たとえ簡単なものでも口頭で魔術を使えれば庶民が呪文を刻んだ魔石を買ったりしなくてすむのだが、ファーラガントの王侯貴族には、国民たちの生活を楽にしてやろうという気持ちは無いのかもしれない。
「それでも生活の中だけとはいえ、魔術を自分たちのために使えるのは羨ましいさ……この国では現代魔術語だって使えるのは教会に仕える者だけだし、生活魔法については魔石を王家管轄の商会から購入して魔力を込めて始動するしかないからな」
「え?でも、お前は?」
バディアスはキョトンとする。
名前の知らない薬草を混ぜ込んだ洗浄液。
不法侵入者を許さない『見えない壁』を張り巡らせた家。
見たこともない薬酒。
挙句の果てが、ラウナ王国の支配階級しか知らない古代魔術の解除と再契約。
『流浪のディー』は、バディアスが知るよりもはるかに知られていないことが多い一族らしいと見当がついた。
「……了解した。アンタの秘密は、その赤ん坊が種類不明の獣人であること。そしてアンタ自身が『流浪のディー』であるが、その一族に関する話すべて……ってことだな」
「ああ。で、そちらの秘密はお前がラウナ王国前国王の末子であること、その中でもとびきりお前のことを気に入らない姉姫が『達成不可能な伝説級の秘宝を手に入れろ』というムチャぶりで、どことも知れない地の果てで行き倒れることを願われてるってことか」
「あっ……あぁ……それはそうなんだが……まとめられると、案外ヘコむ……」
何を驚くことがある?
シロンは不思議に思った。
契約系の秘儀はどんなものでも発光はするはずだし、『契約の儀』を行ったのならば、バディアスはその光を見ているはずなのだが──
「はぁぁ……こんな綺麗な……前の時にはなぜか目隠しさせられてたんだよなぁ……王族として認められない俺みたいな『穢れ者』には見せられんとか言われて……」
「穢れ者って……つまらんことを言う奴らがいるんだな、お前の国には」
呆れた顔のシロンに向かって、バディアスはさらに呆れた顔で返す。
「だろ?そんなんが半分とはいえ血の繋がった異母きょうだいなんてゾッとするぜ。あ、後は儀式を執り行った司祭だとか諜報部の奴らだとか……まぁ、軒並みロクなもんじゃないのさ、ふっるーい形式ばったお貴族様たちはさ」
「ふぅん……おそらく、その古代語による呪術を秘したい者たちが『権力者たち』ってことなんだろうな」
「そうだな……本当に難しいものは確かに貴族や王族しか知ることはないらしい。俺たち庶民には簡単な生活に関わる古代魔法語が教えられる」
処変われば何とやらだな──シロンは魔術のほとんどが王侯貴族によって制御され秘されている自国との違いを考えた。
たとえ簡単なものでも口頭で魔術を使えれば庶民が呪文を刻んだ魔石を買ったりしなくてすむのだが、ファーラガントの王侯貴族には、国民たちの生活を楽にしてやろうという気持ちは無いのかもしれない。
「それでも生活の中だけとはいえ、魔術を自分たちのために使えるのは羨ましいさ……この国では現代魔術語だって使えるのは教会に仕える者だけだし、生活魔法については魔石を王家管轄の商会から購入して魔力を込めて始動するしかないからな」
「え?でも、お前は?」
バディアスはキョトンとする。
名前の知らない薬草を混ぜ込んだ洗浄液。
不法侵入者を許さない『見えない壁』を張り巡らせた家。
見たこともない薬酒。
挙句の果てが、ラウナ王国の支配階級しか知らない古代魔術の解除と再契約。
『流浪のディー』は、バディアスが知るよりもはるかに知られていないことが多い一族らしいと見当がついた。
「……了解した。アンタの秘密は、その赤ん坊が種類不明の獣人であること。そしてアンタ自身が『流浪のディー』であるが、その一族に関する話すべて……ってことだな」
「ああ。で、そちらの秘密はお前がラウナ王国前国王の末子であること、その中でもとびきりお前のことを気に入らない姉姫が『達成不可能な伝説級の秘宝を手に入れろ』というムチャぶりで、どことも知れない地の果てで行き倒れることを願われてるってことか」
「あっ……あぁ……それはそうなんだが……まとめられると、案外ヘコむ……」
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる