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~侵入者編~
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「……ディーヴァントの一族は、国が『国』となる前から、国が興り、廃れ、また興る遥か前から、『魔素毒の森の管理者』として、一族は常に在る。各地にある魔素毒の森を訪れ、伐採し、魔素毒が拡がって魔物が世界を覆い尽くさないように」
「ふーん……」
あまり興味というか、危機感のなさそうな顔でバディアスは頷く。
魔素毒を含む植物がどんどん勢力を増してその面積を広げるということは、その森から発生する魔物が増え、その魔物を糧にしている獣人族が増え、非力すぎる人間族の方が隠れ住まなければならなくなるというのに──
「その均衡を護るのが、俺たちディーヴァント一族だ」
「均衡……」
魔物も獣人族も、直接的には関わり合いのないと思われている精霊族も魔族すら、どの種族よりも非力な人間族にとっては大いなる脅威だ。
いっそのことすべての森を焼き払ってしまえばいい──そんな好戦的な輩がいないわけではない。
だが、そんなことをすればその森から受けていた魔素毒による恩恵を失い、魔物も獣人族もいなくなった『清浄な土地』は、他に生きる者すべてを無に帰した。
文字通り、『無』だ。
そんな大地ではすべての草木が枯れ、水は泥となり、病を治すための薬草も手に入らなくなる。
「いや……でも、そんなことになったなんて、今まで歴史上はない……だろう?」
「ああ。そうならないために、俺たち一族がいる……いや、いたんだ」
「え?」
「俺が、その一族の最後のひとりってわけだ」
その減少は血族間婚姻に原因があったのかもしれない。
だが、それにしては急激な減りようだったのは否めない。
「誘拐や監禁なども疑われたが、一族は皆、違うルートを通って各地の森を管理していたせいで、真相は未だにわからない」
「わからない……って」
「とりあえずすべての森に行ってみないとな。ここら辺は両親や祖父母が百年ぐらいずっと管理していたから、ファーガラント国内でも王都を挟んで反対側とか……きな臭い場所は無いわけじゃないから、虱潰しに生き残りがいないか探すしかないってわけさ」
「そ、壮大な人探しだな……」
バディアスが呆れたように、事も無げなシロンを見つめる。
「まあな。一族は誰も定住していないから、情報交換は決められた地点に集まるしかないんだが、俺がガキの頃から他の奴らには会ったことがないんだ」
「そりゃまた、意味有りげだねぇ」
「まぁ……その別地点に行こうにも、赤ん坊や子供連れでは安全が確保できないような森もあるからな。そんなわけで、直接交渉でお前さんを雇いたい」
「なぁる……」
納得の声を上げてはいるものの、バディアスの顔つきはまだ好奇心を失っておらず、次はどんな『秘密』が紡ぎ出されるのかという期待の色を隠さない。
「ふーん……」
あまり興味というか、危機感のなさそうな顔でバディアスは頷く。
魔素毒を含む植物がどんどん勢力を増してその面積を広げるということは、その森から発生する魔物が増え、その魔物を糧にしている獣人族が増え、非力すぎる人間族の方が隠れ住まなければならなくなるというのに──
「その均衡を護るのが、俺たちディーヴァント一族だ」
「均衡……」
魔物も獣人族も、直接的には関わり合いのないと思われている精霊族も魔族すら、どの種族よりも非力な人間族にとっては大いなる脅威だ。
いっそのことすべての森を焼き払ってしまえばいい──そんな好戦的な輩がいないわけではない。
だが、そんなことをすればその森から受けていた魔素毒による恩恵を失い、魔物も獣人族もいなくなった『清浄な土地』は、他に生きる者すべてを無に帰した。
文字通り、『無』だ。
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「いや……でも、そんなことになったなんて、今まで歴史上はない……だろう?」
「ああ。そうならないために、俺たち一族がいる……いや、いたんだ」
「え?」
「俺が、その一族の最後のひとりってわけだ」
その減少は血族間婚姻に原因があったのかもしれない。
だが、それにしては急激な減りようだったのは否めない。
「誘拐や監禁なども疑われたが、一族は皆、違うルートを通って各地の森を管理していたせいで、真相は未だにわからない」
「わからない……って」
「とりあえずすべての森に行ってみないとな。ここら辺は両親や祖父母が百年ぐらいずっと管理していたから、ファーガラント国内でも王都を挟んで反対側とか……きな臭い場所は無いわけじゃないから、虱潰しに生き残りがいないか探すしかないってわけさ」
「そ、壮大な人探しだな……」
バディアスが呆れたように、事も無げなシロンを見つめる。
「まあな。一族は誰も定住していないから、情報交換は決められた地点に集まるしかないんだが、俺がガキの頃から他の奴らには会ったことがないんだ」
「そりゃまた、意味有りげだねぇ」
「まぁ……その別地点に行こうにも、赤ん坊や子供連れでは安全が確保できないような森もあるからな。そんなわけで、直接交渉でお前さんを雇いたい」
「なぁる……」
納得の声を上げてはいるものの、バディアスの顔つきはまだ好奇心を失っておらず、次はどんな『秘密』が紡ぎ出されるのかという期待の色を隠さない。
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