今日も隠して生きてます。~モフ耳最強なんて、誰が言った?!~

行枝ローザ

文字の大きさ
上 下
31 / 109
~侵入者編~

しおりを挟む
その『魔法の水』が掃除だけでなく、自分自身にも使われ、おまけに服やブーツまでさらも同然に綺麗になったのを知ると、男はシロンに対して俄然興味が湧いたようである。
「いったい……あんた、やっぱり魔術師じゃないのか?研究所にも行かずに、こんなところに隠れ住んでるなんて、一体何をやらかしたんだ?」
「隠れているわけでも、魔術師でもない。お前こそ、どうやってこの家に入りこんだ?」
「え?何かこの村の端に住んでいる男があやしいから調べてくれって、冒険者ギルドに依頼があって……領都からそんなに離れてはいないし『調査』だけだから依頼料も安いし、パーティーを組む必要も無いから報酬は独り占めなのに誰も引き受けなくて……だから俺が引き受けたんだけど?何か見えない壁…結界か?その隙間みたいなのから出入りした男がいたんで、同じところから入っただけだけど?」
ギルドへの依頼はおそらくこの村の誰か──村長とシロンが顔見知りらしいのは知ってはいたがその『関係』を知りたがった者だろう──で、簡単な仕事にも関わらず、他の冒険者たちが引き受けなかったのはおそらく村の名前や位置から『変な術を使うらしい男』がディーヴァント一族の誰かだと検討をつけたからだと見当をつける。
結界の穴は村長の家から食べ物を届けてもらうために、わざと開けておいたものだが、許可した者以外は入るどころか探し当てることすら叶わないはずだった。
「……お前、この領地……いや、どこか別の国の者か?」
「ん?ああ。俺はバディアス・バーミロガ。はるばる海を渡って幾千里~ってわけさ。国の名前は聞くな?聞いてもきっと知らないから」
「千里?その言い回しは、ラウナ国か。ずいぶん古い言葉をまだ使っているんだな?ここらじゃ古代語に近いぞ。それにしては、ファーガラント語の発音が綺麗だが……」
「えっ?!嘘っ!!ヤベッ!!!今まで俺の出身地を当てた奴なんていないぜ……あんた、マジでナニモンだ?」
ジィッと探るように見られたが、シロンの『仕事』を打ち明けるべきかどうか迷った。
同国の冒険者でもクラスが上になればなるほど、魔法研究所を通してギルドに卸される魔法薬や『隷属の枷』の調達者がディーヴァント一族であることは知られているが、他国ではどうなのだろう?
本来なら各地に散っている一族の者たちは、魔素毒の森の近くに建てた数軒の家に数日から半年ほど逗留することで情報を共有し、また実際に体験するために旅の行き先を交換し、そしてまた別の地で別の一族の家族と交わり合う──そうやって、血と経験と情報を紡いできた。
だが、その数は特殊な仕事ゆえに血縁以外との婚姻を避けたために減少し、そして行方がわからなくなったり戦いに巻き込まれて亡くなったりと、シロンが知る限り、少なくともこの大陸にある魔素毒の森の『管理者』はシロンしかいない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

処理中です...