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~侵入者編~
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その『魔法の水』が掃除だけでなく、自分自身にも使われ、おまけに服やブーツまで真っ新も同然に綺麗になったのを知ると、男はシロンに対して俄然興味が湧いたようである。
「いったい……あんた、やっぱり魔術師じゃないのか?研究所にも行かずに、こんなところに隠れ住んでるなんて、一体何をやらかしたんだ?」
「隠れているわけでも、魔術師でもない。お前こそ、どうやってこの家に入りこんだ?」
「え?何かこの村の端に住んでいる男があやしいから調べてくれって、冒険者ギルドに依頼があって……領都からそんなに離れてはいないし『調査』だけだから依頼料も安いし、パーティーを組む必要も無いから報酬は独り占めなのに誰も引き受けなくて……だから俺が引き受けたんだけど?何か見えない壁…結界か?その隙間みたいなのから出入りした男がいたんで、同じところから入っただけだけど?」
ギルドへの依頼はおそらくこの村の誰か──村長とシロンが顔見知りらしいのは知ってはいたがその『関係』を知りたがった者だろう──で、簡単な仕事にも関わらず、他の冒険者たちが引き受けなかったのはおそらく村の名前や位置から『変な術を使うらしい男』がディーヴァント一族の誰かだと検討をつけたからだと見当をつける。
結界の穴は村長の家から食べ物を届けてもらうために、わざと開けておいたものだが、許可した者以外は入るどころか探し当てることすら叶わないはずだった。
「……お前、この領地……いや、どこか別の国の者か?」
「ん?ああ。俺はバディアス・バーミロガ。はるばる海を渡って幾千里~ってわけさ。国の名前は聞くな?聞いてもきっと知らないから」
「千里?その言い回しは、ラウナ国か。ずいぶん古い言葉をまだ使っているんだな?ここらじゃ古代語に近いぞ。それにしては、ファーガラント語の発音が綺麗だが……」
「えっ?!嘘っ!!ヤベッ!!!今まで俺の出身地を当てた奴なんていないぜ……あんた、マジでナニモンだ?」
ジィッと探るように見られたが、シロンの『仕事』を打ち明けるべきかどうか迷った。
同国の冒険者でもクラスが上になればなるほど、魔法研究所を通してギルドに卸される魔法薬や『隷属の枷』の調達者がディーヴァント一族であることは知られているが、他国ではどうなのだろう?
本来なら各地に散っている一族の者たちは、魔素毒の森の近くに建てた数軒の家に数日から半年ほど逗留することで情報を共有し、また実際に体験するために旅の行き先を交換し、そしてまた別の地で別の一族の家族と交わり合う──そうやって、血と経験と情報を紡いできた。
だが、その数は特殊な仕事ゆえに血縁以外との婚姻を避けたために減少し、そして行方がわからなくなったり戦いに巻き込まれて亡くなったりと、シロンが知る限り、少なくともこの大陸にある魔素毒の森の『管理者』はシロンしかいない。
「いったい……あんた、やっぱり魔術師じゃないのか?研究所にも行かずに、こんなところに隠れ住んでるなんて、一体何をやらかしたんだ?」
「隠れているわけでも、魔術師でもない。お前こそ、どうやってこの家に入りこんだ?」
「え?何かこの村の端に住んでいる男があやしいから調べてくれって、冒険者ギルドに依頼があって……領都からそんなに離れてはいないし『調査』だけだから依頼料も安いし、パーティーを組む必要も無いから報酬は独り占めなのに誰も引き受けなくて……だから俺が引き受けたんだけど?何か見えない壁…結界か?その隙間みたいなのから出入りした男がいたんで、同じところから入っただけだけど?」
ギルドへの依頼はおそらくこの村の誰か──村長とシロンが顔見知りらしいのは知ってはいたがその『関係』を知りたがった者だろう──で、簡単な仕事にも関わらず、他の冒険者たちが引き受けなかったのはおそらく村の名前や位置から『変な術を使うらしい男』がディーヴァント一族の誰かだと検討をつけたからだと見当をつける。
結界の穴は村長の家から食べ物を届けてもらうために、わざと開けておいたものだが、許可した者以外は入るどころか探し当てることすら叶わないはずだった。
「……お前、この領地……いや、どこか別の国の者か?」
「ん?ああ。俺はバディアス・バーミロガ。はるばる海を渡って幾千里~ってわけさ。国の名前は聞くな?聞いてもきっと知らないから」
「千里?その言い回しは、ラウナ国か。ずいぶん古い言葉をまだ使っているんだな?ここらじゃ古代語に近いぞ。それにしては、ファーガラント語の発音が綺麗だが……」
「えっ?!嘘っ!!ヤベッ!!!今まで俺の出身地を当てた奴なんていないぜ……あんた、マジでナニモンだ?」
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同国の冒険者でもクラスが上になればなるほど、魔法研究所を通してギルドに卸される魔法薬や『隷属の枷』の調達者がディーヴァント一族であることは知られているが、他国ではどうなのだろう?
本来なら各地に散っている一族の者たちは、魔素毒の森の近くに建てた数軒の家に数日から半年ほど逗留することで情報を共有し、また実際に体験するために旅の行き先を交換し、そしてまた別の地で別の一族の家族と交わり合う──そうやって、血と経験と情報を紡いできた。
だが、その数は特殊な仕事ゆえに血縁以外との婚姻を避けたために減少し、そして行方がわからなくなったり戦いに巻き込まれて亡くなったりと、シロンが知る限り、少なくともこの大陸にある魔素毒の森の『管理者』はシロンしかいない。
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