今日も隠して生きてます。~モフ耳最強なんて、誰が言った?!~

行枝ローザ

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~誕生編~

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契約の内容を守らない──それならば『雇い主』であるシロンから制裁を加えられても、文句は言えないはずだ。
それどころか──
「だいたい奴は身体を表面的に拭っているかもしれないが、洗ってはいないはずだろう?さっきの行為で獣人族であるエレビウの『匂い』をつけたままだからな。生きてこの森を出られるどころか、ひと思いに殺されることも叶わないさ」
どこまでシロンの言うことを理解しているのかわからないが、エレビウはカッと頬を染めて俯く。
まさか寝ていたはずのシロンに、自分が主人に犯されていたことがバレていたとは思わなかったらしい。
その表情に気づかぬふりをしてシロンは、『捧げ物』をせずに命を落とした冒険者たちの末路が穏やかではないことをエレビウに教える。
そうは言われても、昨日今日会ったシロンよりは『主人』の強さを知っているエレビウは、微妙に納得がいかないような目つきをしつつ、どこか期待を込めて頷いた。
「……あんまり、ヒトの名前を変えるのは嫌なんだけどな」
シロンはわずかな時間だけ悩んだが、すぐに決心したようにエレビウに告げた。
「エレビウ。お前は今この時から『レビウス』だ。安直だけど、俺に名付けのセンスはないんだ」
『なぜ 新しい 名前』
「ん~……まあ、教会やなんかで『真名』の洗礼を受けていたらどんなに名前を変えても無駄なんだが……たぶん、お前の『主人』はそんな親切な奴でもなさそうだからな。これで縁が切れるはずだ」
そうやって改名した名前を『真名』として洗礼を受けさせれば、万が一誰かが行方を探そうと魔道具などを使ったとしても、ガバリネスはともかく少なくともエレビウを見つけることは永遠にできない。
「この森のそばはいたくないだろうから……俺の一族が管理している場所のひとつに、ここよりは魔素毒の弱い森がある。『真名』の洗礼もそこで済ませるから、そっちの管理を任せたい。数年に一度ぐらいになるが、俺も時々顔を出すから……」
秘伝の中でも簡単な加護の術を口頭で教え、忌々しい口枷を外し──手枷には特別な呪術がかかっていて、シロンには解呪できなかったが──シロンが母と離れて父とふたりきりで生活と採取をした、もうひとつの『初めての家』に向かって旅をしたのだった。
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