今日も隠して生きてます。~モフ耳最強なんて、誰が言った?!~

行枝ローザ

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~誕生編~

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「ふん。『お前』呼ばわりとは偉そうだな。まあ……今回は、お前が雇い主だからな。大目に見てやる。それで、そいつの味はどうだった?たいして『仕事』が進んでいないところを見ると、ずいぶんお楽しみだったみたいだな?」
「お前……まさか、全部の魔石を持ってきたのか?」
ガバリネスのいやらしい笑みとその台詞の意味を無視して、シロンが青ざめて聞き返すと、さも当然だという態度が返ってきた。
「あぁ?当たり前だろう!うっとおしい虫どもだったが、数だけは多くてな……動物型の魔物ではなかったから肉は取れんし、魔石の大きさもどうしようもないが、これだけあれば……」
「バカ野郎!!!」
シロンが怒鳴りつけると、キョトンと子供じみた驚愕顔でガバリネスは黙った。
「『捧げ物』を残してこなかったのか……」
「ささげもの?何だ、それは?」
ガバリネスの口から発せられたその言葉に、シロンは愕然とした。


魔石を抜き取ってしまうと、魔素毒の塊である魔物は骨や外殻だけを残して消え去ってしまう。
だから石を抜かない動物型の個体は舌などの内臓のひとつを、外殻を持つ魔物はその前足を一本だけ切り取ってギルドに差し出すことで、たとえ仕事として請け負っていなかったとしても『討伐の証』として相応の代金がもらえるのだ。

これは魔力が強く宿る魔石と内臓をまるごと残した魔物を『捧げ物』と称し、獣人族に対して自分たちが森から出るまで襲わせないための儀式でもある。
どうして獣人が魔物を狩られたことをすぐ知るのかわからないが、この『捧げ物』を残さないとたとえ最上級の冒険者と言えども、魔素毒の森を無事に抜けられるとは限らないのに──

魔素毒の森の外にまで這い出た魔物を倒した場合は『捧げ物』を残さずとも、獣人に襲われることはないため、迷い出た魔物を倒すことを専門としている冒険者の多くはこの『儀式』を知らない。
だが、今回の依頼では『魔物に遭遇しても一割ほどの魔物は手つかずに放置し、すべての魔石を回収してはいけない』というのが、シロンが依頼した契約条件の一つだったはずだ。

それなのに───

「クソッ!」
今まで我慢していた感情がブチンと弾けたシロンが睨みつけると、その迫力にガバリネスは後ずさった。
「な……何だ?……何をそんなに怒っている……まだ『仕事』が終わっていないのなら……お、俺は、また魔物がいないか見回ってきてやるが……」
「ああ、行け!行ってしまえ!!」
怒りに任せてシロンが怒鳴りつけると、ガバリネスはエレビウに向かって自分のそばに来るようにと合図した。
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