今日も隠して生きてます。~モフ耳最強なんて、誰が言った?!~

行枝ローザ

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~誕生編~

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この世界には、大まかに分けて四種の種族がいる。

魔族。
精霊。
獣人族。
そして、人間族。

最強魔種の魔族は最弱魔力の人間と関わることを嫌い、最上級魔法で作り上げた隔離壁の中で独自の文化で生きているという。
本来ならまったくその歴史や生態が人間に伝わるはずもないが、実際のところ人間でいうところの『好奇心』というものは魔族にもあるらしく、ある条件のもとで人間の領域に現れて滞在する者たちにより、最高級機密伝聞として、王族を始めとした上級社会には伝えられていた。

精霊は魔族に近い魔力を保持している種族だが、獣人族と親しく、稀に魔力の強い人間を守護するといわれている。
その存在や精霊に守護された者を、王族直轄の魔法研究所が『保護』という名の元に強制的に所属させ、その情報を制御していた。

獣人族は魔族とも精霊とも違う種で、人間の世界にいる動物が人化変種したとも、狂暴野生化した獣が魔素毒の森に棲みついて魔力を得て人間と無理やり交わり、亜種を産み育てて血を繋いだとも言われているが、歴史を残すという文化がないため、その進化は誰にもわからない。

人間族もまたどこから派生したかはっきりせず、自ら神の落とし子という神話を伝えているが、生まれつき魔力のある人間はほぼいなかったため『魔力』というものを理解するのに時間がかかり、どの種族とも違う文化を発展させてきたのである。

初めの頃は人間しか知能のあるものはいないと考えられ、放置されて拡がった魔力の強い森から魔素毒が溢れた結果として、森の外に魔物が溢れ出て、抵抗するにも力のない人間を襲うことがままあった。
それを退治するのが『冒険者』といわれる職業の者であるが、獣人族もその魔物を狙っているため、お互いがその『狩り場』に出くわすことが徐々に増えていったのが、敵対する始まりだと言っても過言ではない。
人のように見えるが、ヒトではないモノたちは人間族が目にする野生動物によく似た特徴を持ち、いつしか『獣人』と呼ばれて分類されるのに時間はかからなかった。
彼らは関わり合いを避けるように狩った『獲物』を抱えたまま消えるのが通常だったが、たまに欲張って人間が退治した魔物まで持ち去ろうとする獣人もいるのがそもそも交わってはならない始まり──言語が違いすぎるのか人間側からの呼びかけを理解する様子がないのを、人間は魔物と同じ『退治するべきモノ』と位置付けて、その場で攻撃を仕掛けたのである。

最初は軽々と退けた獣人たちは人間を『狩る』ことなく引いたのだが、その膂力を我が物にしたいと願う王が現れたことで、両者のパワーバランスが崩れてしまった。
まさしく『人外の力』を得ようとする貴族たちが魔素毒の森を研究し、獣人を生け捕りにするための無力化方法を探り当ててしまったためである。
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