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決心
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そんなふうに問題解決を試みながらも、一向に解決はしない。
それはそうだ──ルエナの学園内側近についても、ルエナが幼少から薬を盛られた件も、『公式』にはないはずの『キャラクター設定』のようなもの。
しかも本来ならばルエナ自身は『悪役令嬢』として断罪され、劣悪な環境の修道院に追いやられるのがお約束なのだから、ここまでルエナを守るようなストーリーはない。
そしてルエナに濡れ衣を被せた件の首謀者に関しては、どんな公式にも二次作品にもゲームにもまったくない展開のため、もう相手に自白させるしか方法はないのだ。
しかもこの手が使えるのは、ゲームと同様この学園の中だけだというのは王国や学園の法律や規則を熟知しているリオンだけでなく、『設定』という言葉にギラリと目を光らせて徹底的に頭に叩き込んだシーナも理解している。
卒業を迎えて『学園』という小さな楽園から解き放たれた若い貴族令息令嬢は名実ともに『成人』として扱われ、次期当主としての教育を受けていない者たちにもその行動に責任が伴い、それは家門に紐付けられてしまうのだ。
下手をすれば歴史ある高位貴族が一族ごと王国系譜から消え去る──それほどのことが、ルエナの身に起こっている。
いや、起こっていた。
まだほっそりとしてはいるものの、シーナが調合したスパイスやら薬効のあるハーブをブレンドしたお茶を飲んでいる間はほんのりと紅潮するルエナの頬と指先を愛おしく見つめながら、リオンは深く息を吸い、そして吐いた。
次の呼吸で、グッと腹に力を込める。
「……もうそろそろ、決着をつけよう」
「証拠もないのに?」
「ないわけじゃないだろう?」
「そりゃそう、だけど……」
正体不明の誰かがどこかから持ち込んで置いていった『お茶』
上級使用人としてルエナの専属侍女だった侯爵令嬢。
その彼女が受けていたという『指示』
だがそのどれも「知らない」と言われれば?
植物に一家言のあるフルール・テュア・ディーファン公爵夫人が娘の飲んでいた『お茶』に気付かなかったことを逆手に取り、「娘を使って『お茶』の効能を試し、婚姻が成った暁には王族にその『お茶』を飲ませるつもりだったのでは」とありもしない悪評を広げられたら?
実際ルエナが病的なまでに痩せ細った姿と孤立した状態をあげつらって陰口を叩き、元平民であり何故か王太子のそばにいることを許されたシーナに対する嫌がらせをやっていたと決めつけられていたのである。
「もうそろそろ、幕引きしないといけない時期だしね」
リオンは立ち上がると、自分の婚約者に優雅に手を差し伸べた。
それはそうだ──ルエナの学園内側近についても、ルエナが幼少から薬を盛られた件も、『公式』にはないはずの『キャラクター設定』のようなもの。
しかも本来ならばルエナ自身は『悪役令嬢』として断罪され、劣悪な環境の修道院に追いやられるのがお約束なのだから、ここまでルエナを守るようなストーリーはない。
そしてルエナに濡れ衣を被せた件の首謀者に関しては、どんな公式にも二次作品にもゲームにもまったくない展開のため、もう相手に自白させるしか方法はないのだ。
しかもこの手が使えるのは、ゲームと同様この学園の中だけだというのは王国や学園の法律や規則を熟知しているリオンだけでなく、『設定』という言葉にギラリと目を光らせて徹底的に頭に叩き込んだシーナも理解している。
卒業を迎えて『学園』という小さな楽園から解き放たれた若い貴族令息令嬢は名実ともに『成人』として扱われ、次期当主としての教育を受けていない者たちにもその行動に責任が伴い、それは家門に紐付けられてしまうのだ。
下手をすれば歴史ある高位貴族が一族ごと王国系譜から消え去る──それほどのことが、ルエナの身に起こっている。
いや、起こっていた。
まだほっそりとしてはいるものの、シーナが調合したスパイスやら薬効のあるハーブをブレンドしたお茶を飲んでいる間はほんのりと紅潮するルエナの頬と指先を愛おしく見つめながら、リオンは深く息を吸い、そして吐いた。
次の呼吸で、グッと腹に力を込める。
「……もうそろそろ、決着をつけよう」
「証拠もないのに?」
「ないわけじゃないだろう?」
「そりゃそう、だけど……」
正体不明の誰かがどこかから持ち込んで置いていった『お茶』
上級使用人としてルエナの専属侍女だった侯爵令嬢。
その彼女が受けていたという『指示』
だがそのどれも「知らない」と言われれば?
植物に一家言のあるフルール・テュア・ディーファン公爵夫人が娘の飲んでいた『お茶』に気付かなかったことを逆手に取り、「娘を使って『お茶』の効能を試し、婚姻が成った暁には王族にその『お茶』を飲ませるつもりだったのでは」とありもしない悪評を広げられたら?
実際ルエナが病的なまでに痩せ細った姿と孤立した状態をあげつらって陰口を叩き、元平民であり何故か王太子のそばにいることを許されたシーナに対する嫌がらせをやっていたと決めつけられていたのである。
「もうそろそろ、幕引きしないといけない時期だしね」
リオンは立ち上がると、自分の婚約者に優雅に手を差し伸べた。
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