婚約者とヒロインが悪役令嬢を推しにした結果、別の令嬢に悪役フラグが立っちゃってごめん!

行枝ローザ

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側近・1

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王太子の学園内側近が複数選ばれるのに比べ、婚約者の令嬢に側近が付いたことはない。
さすがに王女が入学した際は側近が付くが、その場合は乳母が産んだ娘がいれば乳姉妹として育てられた者がそのまま側付きとして学園に入学するか、いなければ3歳から5歳くらいまでの間に王妃が開くお茶会に呼ばれた令嬢たちの中から選ばれるがほとんど1人しかつかないのだ。
もっともルエナに関しては判断力が鈍らされてはいたが、本人がそんな自分のそばに他の令嬢を近づけたくないと拒み続けたため、親しい幼馴染みすらいない状態でずっと過ごしてきた。
「だからって~」
「いいじゃない!もう小間使いもお話相手でも側近候補でも!」
「いや、王国の慣例として、王妃の側につくのは最低でも伯爵位の令嬢で……」
「それはお手付きになった時に爵位が低いと格好がつかないからでしょ?!この浮気者!」
「誰が浮気なんかするか!てか、その台詞は嫁から言われる言葉で……」
ギャアギャアと言い合う王太子と子爵令嬢──本来ならば間違ってもこんな気安い言葉遣いで口喧嘩などできない。
それがたとえ乳兄弟だとしても、だ。
なのに元気よく言い返しているシーナ・ティア・オイン子爵令嬢は貴族令嬢として育ったわけでもないし、ましてやアルベールのように幼い頃から側仕えになるべく一緒にいたわけでもない。
実際は子供の頃から何度もこっそりと三人で遊んでいたりしたのだが、ハラハラと見守っているルエナは知らなかった。
「だからと言って、やっぱりこのままルエナを1人にしておくことなんかできない!今までは1人で……っていうか、名ばかり取り巻きがいたかもしれないけど、正気に戻ったならそれすらも近付けるわけがない…っていうか、すでに近付けてないんだから!ネッ!!」
ルエナ本人よりもよく周りを見ているシーナがフンスッと鼻息荒く、両手を握りしめる。
その勢いに話題にされているルエナがビクッと肩を震わせてから、慌てて頷いた。
「……いや、たぶんそれはそうだと思うけど」
同じ教室で授業を受けているならばともかく、一応侯爵令嬢のルエナと子爵令嬢のシーナでは成績どころか家格の差で別の部屋にいるはずなのだが──何故それを知っているのかとリオンは聞かない。
何せその情報をシーナにリーク、もとい共有しているのが、男女別の授業以外は一緒にいるリオン本人なのだ。
人知れず薬混じりのお茶を飲まされてどんよりした状態ではなく、明らかに輝きを取り戻しているルエナは、以前にもまして悪意ある噂や回りくどく嫌味を言い合う令嬢たちから距離を置いている。

もちろんそんな心根の持ち主ばかりではない。

だからそういう令嬢をルエナのそばに置きたいのだが、ルエナのそばにいることで彼女がやったことになっている悪事の片棒を担いだように言われたり、自分の親に不利なことになると脅しつけられる可能性もある。
そういったことに負けなさそうな高位爵位家の令嬢にその役目を負わせたとしても、それがルエナを貶めようとしている貴族家と繋がっていないとも限らないため、いろいろと調査が必要なのだ。

時間さえあれば──

だがもう少しすればリオンやルエナも卒業となり、その式典を最後のチャンスと仕掛けてくることも考えられるため、猶予があるとは言えなかった。


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