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産業
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シーナの発案と実行が為された『エホン』は『エ・ホン』というそのままのシリーズ名で発行された。
ついでに『名も無い画家』が『シーナ・オイン子爵令嬢』だということも発表され、展示即売会ならぬ似顔絵即売会も開催されることになったのである。
「いやあ、思ったより反発がないねぇ」
「リオンの弟君様々だよ!」
「役に立って何より」
『エ・ホン』国教シリーズ第1冊目を手にしたのはもちろん王家で、来年には貴族学園に入学する第2王子のお気に入りとなっている。
国教聖書は前世の『世界一売れた本』と同様内容は膨大で、しかも古代語からの翻訳はほぼ文言を現代語に直しただけで、意訳も現代表現もなされていない難解な書物だ。
しかもそれをほぼ丸暗記するのがお約束で、大人どころか子供まで同レベルを求める国教のせいで庶民受けが大変悪い。
しかしその難解さと頭の硬さで信者から敬遠されていることに頭を痛めていた国教関係者が『真理である国教を無知識な子供にわかりやすく理解させ、信仰心を高める』という旨味に気付いて複製を求め、さすがに手描きは無理だと転写機械で安価な白黒版が作成されることになった。
「やっぱカラーは難しいか~」
「複色版だっけ?浮世絵的な?世界的にポスターとかでも使われてなかったっけ?」
「デジタルの発達はまだかー!何でこの世界には魔法がないんだ──っ?!」
絵具も紙もまだまだ高価で、インクだってそんなに安くはない。
手書きで複写する専門職もあるぐらいで、仕事を失くしたくない人たちの反発も強いのだ。
しかも2人がハマっていたアプリゲームには魔法は存在せず、その通りのままこの世界には魔法がない。
記憶持ちの転生者がいるくらいなのだからそんなイレギュラーがあってもいいと思うのに、ある意味公正にできている。
そしてまた訳のわからない会話をするリオン王太子とシーナ嬢を生暖かく見つめるアルベールは、この秘密の会に同席させるわけにはいかないと追い出したメイドの代わりにお茶を入れてくれた。
「そういえば服へのプリント技術もまだだよね?そこから産業発展できないかな~…」
「第二次産業か……確かにまだ空白地帯だな……うん……」
いつの間にやら話が国家レベルにまでいきそうな勢いだ。
アルベールは聞き耳を立てながらもギョッとする。
普通貴族令嬢はこんなにも政治や産業などに興味も知識も持たない。
なのに彼女は──
改めて二人が自分達とはまったく別の知識を有しているのを目の当たりにして、アルベールは何となく気後れを感じ出てそっと目を伏せた。
ついでに『名も無い画家』が『シーナ・オイン子爵令嬢』だということも発表され、展示即売会ならぬ似顔絵即売会も開催されることになったのである。
「いやあ、思ったより反発がないねぇ」
「リオンの弟君様々だよ!」
「役に立って何より」
『エ・ホン』国教シリーズ第1冊目を手にしたのはもちろん王家で、来年には貴族学園に入学する第2王子のお気に入りとなっている。
国教聖書は前世の『世界一売れた本』と同様内容は膨大で、しかも古代語からの翻訳はほぼ文言を現代語に直しただけで、意訳も現代表現もなされていない難解な書物だ。
しかもそれをほぼ丸暗記するのがお約束で、大人どころか子供まで同レベルを求める国教のせいで庶民受けが大変悪い。
しかしその難解さと頭の硬さで信者から敬遠されていることに頭を痛めていた国教関係者が『真理である国教を無知識な子供にわかりやすく理解させ、信仰心を高める』という旨味に気付いて複製を求め、さすがに手描きは無理だと転写機械で安価な白黒版が作成されることになった。
「やっぱカラーは難しいか~」
「複色版だっけ?浮世絵的な?世界的にポスターとかでも使われてなかったっけ?」
「デジタルの発達はまだかー!何でこの世界には魔法がないんだ──っ?!」
絵具も紙もまだまだ高価で、インクだってそんなに安くはない。
手書きで複写する専門職もあるぐらいで、仕事を失くしたくない人たちの反発も強いのだ。
しかも2人がハマっていたアプリゲームには魔法は存在せず、その通りのままこの世界には魔法がない。
記憶持ちの転生者がいるくらいなのだからそんなイレギュラーがあってもいいと思うのに、ある意味公正にできている。
そしてまた訳のわからない会話をするリオン王太子とシーナ嬢を生暖かく見つめるアルベールは、この秘密の会に同席させるわけにはいかないと追い出したメイドの代わりにお茶を入れてくれた。
「そういえば服へのプリント技術もまだだよね?そこから産業発展できないかな~…」
「第二次産業か……確かにまだ空白地帯だな……うん……」
いつの間にやら話が国家レベルにまでいきそうな勢いだ。
アルベールは聞き耳を立てながらもギョッとする。
普通貴族令嬢はこんなにも政治や産業などに興味も知識も持たない。
なのに彼女は──
改めて二人が自分達とはまったく別の知識を有しているのを目の当たりにして、アルベールは何となく気後れを感じ出てそっと目を伏せた。
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