230 / 267
誤解
しおりを挟む
つまりルエナ嬢の健康や精神的な問題が解決さえすれば、将来の王太子妃となることには何の問題もないとされ、リオン王太子が望むままに彼女を婚約者として横に置くことができる。
むしろオイン子爵令嬢シーナが王太子のそばに侍ったことこそ学園内の平穏と秩序を乱した原因と言われかねないが、すでに彼女は幼少期から王太子と面識があり、その血筋的にもただの平民ではなくオイン子爵の弟が実父だというのは公表されると、恋愛はともかくとして王太子が親しくするのに支障はないと判明した。
だがそれでも、やはり低位貴族が未来の王太子妃という立場が約束されているルエナを差し置いて、彼の側に堂々と立つのは目につき過ぎる。
むしろ「子爵家の令嬢が側に侍れるならば、もっと高位の自分がその立場になってもいいはずだ」という思い込みで、シーナを蹴落とすためだったというのが、慎み深いはずの貴族令嬢たちの行動理由だったらしい。
「侍るって……子供の頃と今と、あんまり態度は変わってないと思うんだけど……」
「うん。シオ…シーナはそれでいい、と僕も思っていたけどね。どうやらその態度が『貴族らしくなくて新鮮だ』と僕に見初められたらしい…ということなんだけど」
「あ」
ありがちな、テンプレート展開と思考。
そしてその『貴族令嬢らしからぬ態度』こそが、シーナを正し、それができないのだから排除するという方向に行った。
というのがあちらの言い分なのだが。
「……確かに、シーナの…シーナ嬢の身分差を気にしないという性格や物言いは……俺たちにとっても斬新で心地良くて……」
それは良い方への受け取り方であり、端から見れば単なる傍若無人な振る舞いをする非常識な人間である。
シーナにしてみれば前世からの繋がりでリオンを男とすら認識せず、それはもう生まれた時から一緒にいる双子時代の延長上で一緒にいただけであり、同じく学園内側近のイストフらに対しても異性という認識を持っていなかったというだけのこと。
それはもう徹底して彼らを『男』として意識したくないという、魂の記憶と恐怖からであった。
「……そのことについては、うん……何と言っていいのか……ごめん……」
だがそれをきちんと言語化しようとすれば、シーナだけでなくリオンの前世にも触れればならず、しかも二人の記憶の中にあるこの世界が『ゲーム』と『設定』で成り立っているらしいという荒唐無稽な説明をする必要があり、シーナとしては曖昧な笑みを浮かべるしかなかった。
むしろオイン子爵令嬢シーナが王太子のそばに侍ったことこそ学園内の平穏と秩序を乱した原因と言われかねないが、すでに彼女は幼少期から王太子と面識があり、その血筋的にもただの平民ではなくオイン子爵の弟が実父だというのは公表されると、恋愛はともかくとして王太子が親しくするのに支障はないと判明した。
だがそれでも、やはり低位貴族が未来の王太子妃という立場が約束されているルエナを差し置いて、彼の側に堂々と立つのは目につき過ぎる。
むしろ「子爵家の令嬢が側に侍れるならば、もっと高位の自分がその立場になってもいいはずだ」という思い込みで、シーナを蹴落とすためだったというのが、慎み深いはずの貴族令嬢たちの行動理由だったらしい。
「侍るって……子供の頃と今と、あんまり態度は変わってないと思うんだけど……」
「うん。シオ…シーナはそれでいい、と僕も思っていたけどね。どうやらその態度が『貴族らしくなくて新鮮だ』と僕に見初められたらしい…ということなんだけど」
「あ」
ありがちな、テンプレート展開と思考。
そしてその『貴族令嬢らしからぬ態度』こそが、シーナを正し、それができないのだから排除するという方向に行った。
というのがあちらの言い分なのだが。
「……確かに、シーナの…シーナ嬢の身分差を気にしないという性格や物言いは……俺たちにとっても斬新で心地良くて……」
それは良い方への受け取り方であり、端から見れば単なる傍若無人な振る舞いをする非常識な人間である。
シーナにしてみれば前世からの繋がりでリオンを男とすら認識せず、それはもう生まれた時から一緒にいる双子時代の延長上で一緒にいただけであり、同じく学園内側近のイストフらに対しても異性という認識を持っていなかったというだけのこと。
それはもう徹底して彼らを『男』として意識したくないという、魂の記憶と恐怖からであった。
「……そのことについては、うん……何と言っていいのか……ごめん……」
だがそれをきちんと言語化しようとすれば、シーナだけでなくリオンの前世にも触れればならず、しかも二人の記憶の中にあるこの世界が『ゲーム』と『設定』で成り立っているらしいという荒唐無稽な説明をする必要があり、シーナとしては曖昧な笑みを浮かべるしかなかった。
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる