221 / 267
求愛
しおりを挟む
「……とりあえず、パステルとかクレヨン的な物を用意させる」
「ん?」
リオンが溜息をつきつつ告げると、シーナが首をコテンを傾げる。
ピンクブロンドが揺れ、零れそうなほど大きく輝く瞳と陶磁器のような艶やかな頬をした丸っこい顔がキョトンとした表情を浮かべる様はとても愛らしく、すでに恋心の薄れたイストフですら思わずときめいてしまうほど魅力的だ。
「なんで?」
「なんで……っていうか。ほら……やっぱり、さ。子供には情緒教育って必要じゃないか?今までは唯一神の教えが何も薄められずにただ口伝だけで継承されてきたっていうのも、味気ないし。せっかく今こうやっているんだから……」
そして隙あらばとルエナの手を取り、リオンはにっこりと彼女に笑いかける。
「え?」
「王家の慣習はあるけれど、できるだけ僕らの手で子供たちを養育しよう。きっと童話を読み上げる君の声は、天使も聞き惚れるに違いない」
「ハッ……?なっ…何をっ……そ、それに養育はっ、う、乳母の仕事でっ……どっ、どうわって……?」
突然の甘ったるい告白にルエナは目を白黒させながら顔は茹でたこのように真っ赤にした。
むろんそんな感想を持ったのはシーナだけだが、リオンとルエナ以外のテーブルに着く者も護衛の者も皆一斉に砂を吐きそうな顔をして、いい笑顔で婚約者を口説くリオンにじっとりとした視線を向ける。
「……まったく。突然何を言いだすかと思ったら」
「えー?よくない?お前……ンンッ…シ、シーナ嬢はよく童話とかお伽噺を覚えているだろう?」
「ん~…まぁ、ね……小さい時はよくスケッチを描きながらブツブツ呟いてたらしいけど……あっちの話より、こっちの世界で童話とかあるような国のでいいんじゃないの?まったくないってわけじゃないでしょう?」
「う~~ん……それができればいいんだけど……そういう国とはもともと繋がりがない」
「え?」
シーナがキョトンとすると、ルエナが自分を取り戻して説明をする。
「先ほど殿下もおっしゃったけれど、我が国と繋がりがあるのは信仰を共にする国々だけなの。でも……他にも神がいるなんて、何だか信じられないわ……」
「そ、そうなの…‥‥?」
「国交がない」というのは比喩的なものだと思ったのだが、どうやらシーナが考えているよりも深刻に断絶されているものらしい。
王都ではほぼ『異国的な物』を目にすることはなかったのだが、それは単純にシーナや父の懐事情によるものではなく、単純に『邪神を信仰するような下等国の物自体が国には入ってこない』という明確な理由があったのである。
「ん?」
リオンが溜息をつきつつ告げると、シーナが首をコテンを傾げる。
ピンクブロンドが揺れ、零れそうなほど大きく輝く瞳と陶磁器のような艶やかな頬をした丸っこい顔がキョトンとした表情を浮かべる様はとても愛らしく、すでに恋心の薄れたイストフですら思わずときめいてしまうほど魅力的だ。
「なんで?」
「なんで……っていうか。ほら……やっぱり、さ。子供には情緒教育って必要じゃないか?今までは唯一神の教えが何も薄められずにただ口伝だけで継承されてきたっていうのも、味気ないし。せっかく今こうやっているんだから……」
そして隙あらばとルエナの手を取り、リオンはにっこりと彼女に笑いかける。
「え?」
「王家の慣習はあるけれど、できるだけ僕らの手で子供たちを養育しよう。きっと童話を読み上げる君の声は、天使も聞き惚れるに違いない」
「ハッ……?なっ…何をっ……そ、それに養育はっ、う、乳母の仕事でっ……どっ、どうわって……?」
突然の甘ったるい告白にルエナは目を白黒させながら顔は茹でたこのように真っ赤にした。
むろんそんな感想を持ったのはシーナだけだが、リオンとルエナ以外のテーブルに着く者も護衛の者も皆一斉に砂を吐きそうな顔をして、いい笑顔で婚約者を口説くリオンにじっとりとした視線を向ける。
「……まったく。突然何を言いだすかと思ったら」
「えー?よくない?お前……ンンッ…シ、シーナ嬢はよく童話とかお伽噺を覚えているだろう?」
「ん~…まぁ、ね……小さい時はよくスケッチを描きながらブツブツ呟いてたらしいけど……あっちの話より、こっちの世界で童話とかあるような国のでいいんじゃないの?まったくないってわけじゃないでしょう?」
「う~~ん……それができればいいんだけど……そういう国とはもともと繋がりがない」
「え?」
シーナがキョトンとすると、ルエナが自分を取り戻して説明をする。
「先ほど殿下もおっしゃったけれど、我が国と繋がりがあるのは信仰を共にする国々だけなの。でも……他にも神がいるなんて、何だか信じられないわ……」
「そ、そうなの…‥‥?」
「国交がない」というのは比喩的なものだと思ったのだが、どうやらシーナが考えているよりも深刻に断絶されているものらしい。
王都ではほぼ『異国的な物』を目にすることはなかったのだが、それは単純にシーナや父の懐事情によるものではなく、単純に『邪神を信仰するような下等国の物自体が国には入ってこない』という明確な理由があったのである。
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる