婚約者とヒロインが悪役令嬢を推しにした結果、別の令嬢に悪役フラグが立っちゃってごめん!

行枝ローザ

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未知

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『アマゾネス』とは女性だけの集団を指すうえで正しい認識とは言えない──シーナは少し座った目付きでリオンを見た。
さすがにたとえが悪かったかとシーナの方から視線を外し、簡単にルエナに説明をする。
「あ~……ルエナの知らない国でね、密林の中で女性たちだけで暮らす部族がいるとかいないとか……で、その部族名がアマゾネスで……」
「元はギリシャ神話よ」
「え?そ、そうだっけ?」
「ど―セ、アマゾンの中に暮らす女性だけの部族……とか、間違って覚えているんでしょ?違うわよ」
「え!違うの?!」
「違うわよ。ちゃんとググッ……し、調べたの!」
思わず前世のスラングを使いかけてシーナは訂正したが、リオンは目を丸くした。
だが余計な単語を次々と発したせいで、ルエナの目に好奇心が浮かんでいるのも見つけてしまうと、何となく説明したくなる気持ちもわかる。
まるで子供──今まで気力も思考力も奪われ暗示に掛けられているような状態だったルエナにとって、世界は未知の事柄であふれているのかもしれない。
かといって。
「何と言えばいいのか……う~ん……」
いつも持っているスケッチブックにサラサラと『アマゾネス』といわれる像を真似て描くと、ルエナの顔がボッと赤くなった。
そこに描かれていたのは片方の乳房を晒し、簡易服の腰をさらに布で括ったまさしく『ギリシャ神話の女性像』である。
「なっ……なっ……」
侍女に入浴や着替えの手伝いをさせる貴族令嬢としては同性に見られることは慣れていても、異性のいる場所でこのような絵を見ることはないだろう。
そういえば裸婦像もこの世界にはなかったなと、シーナは今さらながらに思い出した。
「あっ、いや、これはこれで間違ってないけど……」
「えっ……いえっ……あのっ…これはその……」
目を伏せつつチラチラとシーナの手元を気にしていたが、改めて書かれた簡単な革鎧をつけた女性の姿に少しほっとした顔をするところを見ると、裸体スケッチに興味がないわけではないらしい。
シーナは頭の中だけでニヤリと笑った──新たな方向での販売活路があるかもしれないと思って。

それはともかく、今度書かれたのは脚も腕も剥き出しだし、まあ胸部も隠すことなく膨らみのままに描かれているので見ようによっては卑猥に感じるかもしれないが、先ほどの古代史にあるような衣服でない分イストフも興味深く眺めているが、それが『女性だけの部族』とどう繋がるのかと不審げな表情である。


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