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結果
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リオンの学園内側近たちについては、ほぼ彼の予想通りとなった。
ディディエ・ファーケン・ムスタフ、ベレフォン・ジュスト・ダンビューラ、ルイフェン・クウェンティ・ダンビューラ、そしてジェラウス・クーラン・クリシュアはそれぞれ二年間の休学。
ただしベレフォンに関してはディディエたちを捕らえる直前から姿がなく、ダンビューラ伯爵家が責任を持って探し出し、弟のルイフェンと同じように王都内か領地の邸宅へ軟禁するようにという通達がされている。
イストフ・シュラー・エビフェールクスについては、他の側近候補たちの誰よりも先にアルベールのもとに下るという姿勢を「変わり身が早い」と嘲笑と罵りを受けたが、それらは当然のことと甘受して自ら謹慎を申し出た。
しかも反省している姿勢を示すためと率先して王都内に屋敷を持たない貴族子息寮にいる使用人の下働きを進んで行い、これまた嘲りを受けることとなったのである。
結果としてエビフェールクス辺境侯爵家当主から『卒業後に実家に帰ってくる必要はない』と事実上の絶縁状を送りつけられ、今後の進路の見通しは悪くなった。
──と思われている。
「それがふたを開けてみれば、リオン王太子側近アルベール・ラダ・ディーファンの直属部下、第二側近という席が用意されているとは」
「まあ思わないわよね。というか、教えるつもりもないんでしょう?」
「ないね」
ニヤニヤと悪い顔で笑い合うのは、彼の最高上司となるリオン王太子と、元想い人であるシーナ・ティア・オイン子爵令嬢だ。
「ついでにエリー嬢の実家には内密の話として、婚約者を次期辺境侯爵より次男に変更した方が、先々に憂いがなくなるぞという耳打ちはしておいた」
「えっ!ナニソレ!良い仕事してんじゃん!!」
ビッとサムズアップしててへぺろスマイルを浮かべる王太子に向かい、同じくシーナもサムズアップする。
この距離を間違えたかのように思える親し気な態度はいつものことと、王太子たちを守るように後ろに立つアルベールは軽く溜息をつきつつ無視をするが、同席するルエナはピクリと眉を顰めた。
場所は学園内の広い庭園の中の四阿のひとつ。
時刻はもう昼休みをだいぶ回っていた。
ルエナはおかしなお茶の影響がだいぶ抜け、シーナ考案の療養食から普通食へとなっている。
ただ量はまだ少なく、手に持っているサンドイッチもいわゆる『一口タイプ』の小ささだ。
「食べられるだけ食べる。飲めるだけ飲む。それが大事」というシーナに言われるまま好きな量だけ口に運んでいるが、悔しいことにそのどれもが美味しい。
特にスープがお気に入りで、澄ましだけでなく、最近はいろんな野菜を使ったポタージュが出るのが嬉しかった。
だがそれでもシーナの気軽な言葉遣いは、貴族令嬢としてはつい注意したくなってしまう。
決して──決して──自分の婚約者と仲が良すぎるような気がして、焼きもちを焼いてるわけでは、きっと、ない。
ディディエ・ファーケン・ムスタフ、ベレフォン・ジュスト・ダンビューラ、ルイフェン・クウェンティ・ダンビューラ、そしてジェラウス・クーラン・クリシュアはそれぞれ二年間の休学。
ただしベレフォンに関してはディディエたちを捕らえる直前から姿がなく、ダンビューラ伯爵家が責任を持って探し出し、弟のルイフェンと同じように王都内か領地の邸宅へ軟禁するようにという通達がされている。
イストフ・シュラー・エビフェールクスについては、他の側近候補たちの誰よりも先にアルベールのもとに下るという姿勢を「変わり身が早い」と嘲笑と罵りを受けたが、それらは当然のことと甘受して自ら謹慎を申し出た。
しかも反省している姿勢を示すためと率先して王都内に屋敷を持たない貴族子息寮にいる使用人の下働きを進んで行い、これまた嘲りを受けることとなったのである。
結果としてエビフェールクス辺境侯爵家当主から『卒業後に実家に帰ってくる必要はない』と事実上の絶縁状を送りつけられ、今後の進路の見通しは悪くなった。
──と思われている。
「それがふたを開けてみれば、リオン王太子側近アルベール・ラダ・ディーファンの直属部下、第二側近という席が用意されているとは」
「まあ思わないわよね。というか、教えるつもりもないんでしょう?」
「ないね」
ニヤニヤと悪い顔で笑い合うのは、彼の最高上司となるリオン王太子と、元想い人であるシーナ・ティア・オイン子爵令嬢だ。
「ついでにエリー嬢の実家には内密の話として、婚約者を次期辺境侯爵より次男に変更した方が、先々に憂いがなくなるぞという耳打ちはしておいた」
「えっ!ナニソレ!良い仕事してんじゃん!!」
ビッとサムズアップしててへぺろスマイルを浮かべる王太子に向かい、同じくシーナもサムズアップする。
この距離を間違えたかのように思える親し気な態度はいつものことと、王太子たちを守るように後ろに立つアルベールは軽く溜息をつきつつ無視をするが、同席するルエナはピクリと眉を顰めた。
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決して──決して──自分の婚約者と仲が良すぎるような気がして、焼きもちを焼いてるわけでは、きっと、ない。
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