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そうしてオイン子爵家から新たな磁器食器と絵付けをする窯元が設立され、後世に多大な貢献を残すのはもう少し後であるが、その源流となる初期作品の絵が『紳士淑女の小さなお茶会』というシリーズであった。
その時はシーナのスケッチをさらに簡易化した絵が付けられたが、その素朴な可愛らしさが子供や若い令嬢向けとして受け、シーナの実父は肖像画描きよりも自分の才を見出すきっかけとなったが、それはまた別の話となる。
自宅で行われた気の置けない人たちとのお茶会に少し自信を取り戻したのか、ルエナの態度や雰囲気は目に見えて優しくなった。
さすがに学園内で声を掛けようとする猛者令嬢はシーナ以外いないが、明らかに子息たちの視線の種類が変わってきたのである。
それは今まで見下す目付きをしなかった令嬢に対する嫌悪感を返すようなものから、微かに欲を含んだ物へと──それを歓迎すべきかどうか、リオンは気が気でないだろうと想像したシーナはふふんと機嫌よく、ルエナにピッタリと寄り添うように腕を取った。
まだまだ同年の貴族令嬢と比べれば肉付きが戻ったとは言えないが、美貌を誇るディーファン公爵家の令嬢と、編入して以来表情豊かであどけなく、学園に入学する頃には感情を抑えて控えめにしか笑わない他の令嬢とは違う愛らしいオイン子爵家の令嬢。
プラチナブロンドの美少女と、ピンクブロンドの美少女。
美しい者と、可愛らしい者。
どちらもが王太子の寵愛を受け──シーナに関しては勘違いも甚だしいのだが、敢えてそう振舞ったせいである──未確定ながら、ルエナ嬢はこのまま正妃となり、シーナ嬢は愛妾として召し抱えられるのではないかと噂が立つのは時間の問題だった。
それは正式な社交会での振る舞いではなく未成年が集められた貴族学園内での噂話だが、教職員や使用人、衛兵以外は大人が入れない場所で親が真偽を判断することは難しく、ほぼ事実だと受け取られているらしい。
用心深い者は若者ならば探りを入れるのは簡単だろうと、リオンたちより一足早く学園を卒業してすぐに王宮内のリオン王太子側近となったアルベールに近付いてきた。
彼らは自分の娘との婚姻を餌に情報を聞き出そうとする者もいたが、元よりシーナ以外には興味のないアルベールとディーファン公爵家から警戒心を抱かせる結果になっただけである。
その時はシーナのスケッチをさらに簡易化した絵が付けられたが、その素朴な可愛らしさが子供や若い令嬢向けとして受け、シーナの実父は肖像画描きよりも自分の才を見出すきっかけとなったが、それはまた別の話となる。
自宅で行われた気の置けない人たちとのお茶会に少し自信を取り戻したのか、ルエナの態度や雰囲気は目に見えて優しくなった。
さすがに学園内で声を掛けようとする猛者令嬢はシーナ以外いないが、明らかに子息たちの視線の種類が変わってきたのである。
それは今まで見下す目付きをしなかった令嬢に対する嫌悪感を返すようなものから、微かに欲を含んだ物へと──それを歓迎すべきかどうか、リオンは気が気でないだろうと想像したシーナはふふんと機嫌よく、ルエナにピッタリと寄り添うように腕を取った。
まだまだ同年の貴族令嬢と比べれば肉付きが戻ったとは言えないが、美貌を誇るディーファン公爵家の令嬢と、編入して以来表情豊かであどけなく、学園に入学する頃には感情を抑えて控えめにしか笑わない他の令嬢とは違う愛らしいオイン子爵家の令嬢。
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彼らは自分の娘との婚姻を餌に情報を聞き出そうとする者もいたが、元よりシーナ以外には興味のないアルベールとディーファン公爵家から警戒心を抱かせる結果になっただけである。
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