婚約者とヒロインが悪役令嬢を推しにした結果、別の令嬢に悪役フラグが立っちゃってごめん!

行枝ローザ

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その予想についてはルエナ自身も顔を顰めつつ、しかしあり得ない話ではないと頷く。
「……ただし、わたくしを『王家から婚姻を拒まれた瑕疵ありの公爵家の娘』として受け入れるとしてもエビフェールクス辺境侯爵当主では難しいでしょうから……侯爵か伯爵家当主で正妻がおらず、すでに後継者の定まったお家でしょうね」
「そ、そんな……」
エリー嬢がサッと顔を青褪めさせてルエナ嬢の方に身体をにじり寄せると、助けを求めるようにイストフを見つめた。
「イストフお兄様……そんな……ルエナお姉様は、そんなことにはなりませんわよね?」
「それは……わからない……」
シーナ嬢を女神の如く崇め、何故そう思い込んでいたのか『王太子の真実の愛』を捧げる女性だと認識し、あの盲目的な想いが本当の気持ちなのか今ではわからなくなってしまった『シーナ嬢への恋』を諦めて、『王家への遺恨を残さぬよう』表向きは王太子の学園内側近のひとりとして『王都から遠ざけ辺境地に閉じ込めるため』に、リオン殿下とルエナ嬢の婚約破棄が成立次第、エビフェールクス辺境侯爵家がイストフの嫁として婚約の申し込みをするという手はずになっていた。
実際、イストフの他、ディディエ・ファーケン・ムスタフやベレフォン・ジュスト・ダンビューラとルイフェン・クウェンティ・ダンビューラ兄弟、ジェラウス・クーラン・クリシュアがリオンのいないところで勝手にそう話し合い、イストフが父に進言したところ、いたくその案を気に入ってその通りにしようと約束したのである。
その際に父が呟いた「もうそろそろ新しい女が欲しいと思っていたところだった」と言うのは、てっきりルエナ嬢についてくるであろう侍女たちからお手付きでも選ぶのかと思っていたが、ひょっとすると──
「エリーの前で言いたくはないが……父も兄と同類だと俺は思っている」
「どうるい?」
「……女性に対して不埒な想いを抱き、それを遂げるのに相手の意思はいらないと思う輩だという意味だ」
「えっ……」
確かに傷物令嬢となったルエナのために付けられる専属侍女であれば同じ年頃の高位貴族令嬢でも次女か三女で嫁つぐあてのない者であるだろうし、国境を守るための兵力を持つ家格としての呼称以上に権力を持つ辺境侯爵家の当主に無体を働かれても拒みようがないだろう。
だが『兄と同類』とイストフが称した現エビフェールクス辺境侯爵はかなり色好きで、兄のような幼女にまでとは言わずとも、自分の息子と変わらぬ歳の成人したての処女おとめの花を散らすことも愉しむような変態だ。
辺境という地は王都からずいぶん遠いため、イストフの嫁として輿入れさせたはずのルエナを奪い取り、そのまま自分の床に引きずり込んだとしてもおかしくはない。
むしろ今までの自分ならば、そうやってルエナが穢され貶められ、父親より年上の男に孕まされたところで「いい気味だ」とせせら笑っていたかもしれないと思うとゾッとする──

「…………にいさま?」
考え込んだイストフに声が掛けられビクッと肩を震わせたが、彼はそちらを見ることができなかった。


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